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仕事のコツ その8.1 V字回復 当たり前過ぎて意識しなくなっていること 

 “V字回復”は仕事だけでは無く私の人生の生き方のコツでもあります。それを人生の多くの時間を使ったサラリーマン時代の”仕事“に適用していました。

 実は”仕事のコツ その3 垂直立ち上げ“ の応用編でもあるのです。

 不測の事態に陥っても、例え投資が嵩(かさ)んでも期限内に目標を達成することを優先します。遅延すると累積損失が積み上がりゴールも遠くなります。所謂お金の現在価値の考え方で、

ジリ貧は絶対に避ける

これに陥ると雪だるま式に遅延が進み手に負えなくなります。

と言うのは垂直立ち上げと同じ基本。

 具体的な経験を例に仕事でのV字回復の流れをご紹介しますね。

 1990年代半ば、研究開発職からの転身、自分で開発し新しい量産工場での生産を立ち上げ、その製品を自分で売りたいと志願。

 その辺りの詳細はこちらのその5前後をお楽しみください。

 初めてのセールス&マーケティングの仕事は半導体ショーテイジ(不足)のど真ん中。営業を掛ける必要もなく、寧ろ注文が裁けず、アロケーションと言って営業同士での製品の奪い合いでした。

 今の半導体の供給もアロケーション状態の模様…


 製品製造の優先順位は儲かるもの、大手で長期契約のあるもの等が優先され、儲からない例えばファウンドリサービスはお断りするという感じでした。

その半年後、シリコンサイクル

の不況になり状況は一転。受注量は半減、価格は数分の1に。どん底の時の価格は、従前より一桁安くなりました。

 そこで当然V字回復を狙い、

 マーケティング(売れる仕組みづくり)。具体的には

·商品構成変更

 製造する製品構成の軸足を手離れの良いメモリから需給が比較的安定しているロジック製品に移しました。
 プリンターのコントローラやRISC系の

 使い勝手の良いプロセッサが柱。特にライセンスを受けていたMIPS系のプロセッサ

のソリューションは安価で高性能な上に使いやすいのでいい感じでした。

 ロジック製品は、お客様の開発に必要なリファレンス回路やソフトウェア群を用意し、サポート体制も敷かなけれはならないものの、その分技術的な難易度も高く高付加価値商品でした。
 ウリはリ知財の塊であるファレンス回路の情報とそこでで動くソフトウェアのソースコードを原則無償提供するという荒業。開発環境を無償提供しちゃう。しかもサポートもしちゃう。新規参入なのでそこまでやるということでした。

·販売地域拡大

 当初の販売地域は、固く国内とスタッフの量産技術研修からお付き合いのある企業のある台湾、私も参画した最先端技術を共同開発した企業のある米国に絞っていました。
 それを東南アジア、欧州、その後中東のイスラエルまで拡大しました。東南アジアは営業マンにとって楽しい所らしく、日本語が通じて英語不要ということもあり国内担当から東南アジアも担当したいという先輩が担当しました。一方で欧州は、参入するには敷居が高く、アジアに比べれば相対的に文化も全く異なる地域なので、私が担当しました。鉄鋼会社ですから伝統的に与信に問題の起こらない超大手を起用しての代理店制を取ります。欧州は、ロンドンに本社があり、お客様の開発支援をウリに高付加価値な販売代理店としてグローバルに展開していた会社に担当して頂きました。

 鉄鋼会社は基本的には極一部の例外を除いては総合商社さん経由での製品の供給(販売なんですけど、イメージとしては供給なんです…(笑))でした。驚くほどの大企業も総合商社さん経由で直販しません。半導体もそれに準じた格好でした。

·市場価格重視

 当時の鉄鋼会社は基幹産業としての役割から、基本的に製造コストに適正利潤を乗せて供給責任を負って安定して販売するという商売の仕方です。ですから例えば極端に言えば限界利益が取れれば販売するという文化は有りませんでした。勿論法外な高値で販売をするようなお作法もありませんでした。
 しかし半導体業界は異なるダイナミックなロジックで動いていました。市場価格で販売する、高値で売れるなら遠慮なくそうして利益を出す、その逆も甘受する、それに近づけるべく緊急避難的に市場価格重視の方針を取りました。

 この3手で取り敢えずどん底からは曲がりなりにもV字回復しました。

 これで製鉄所のコンピューターを一手に任せていた米国の某最大IT企業と共同で半導体事業を本格展開するという所まで行くことができました。その会社とは御縁が続いて、その後、サラリーマンの成れの果てになった時もお世話になりました。

 ということで、かなり思い切った施策をしてどん底を固定化させないV字回復を当事者の1人として経験しました。

つづく



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