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帯に短し襷に短歌

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素朴に歌を詠むということへの憧れがある。素朴に詠めるようになりたいと思うのである。とにかく詠んでみないことにははじまらない。「こんなものは短歌とはいいません」なんて言われたってい…
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たまに短歌 いろはにほへと

たまに短歌 いろはにほへと

あかさたないろはにほへとちりぬるを
一夜人世に出逢う必然

あかさたな いろはにほへと ちりぬるを
ひとよひとよに であうひつぜん

9月20日に日本民藝館で林家たい平の講演を聴いた。芹沢銈介の企画展が開催中で、たい平が芹沢への想いを語るというものだった。話自体は他人事で、一緒に聴いたツレは「あれは、ちょっとねぇ」と不満気だったが、それはそれで私は面白いと思った。

たい平はもともと教師になりたか

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たまに短歌 誰もいなくなる

たまに短歌 誰もいなくなる

思うこと口に出したら罪になる
やがて哀しき浮世の暮らし

おもうこと くちにだしたら つみになる
やがてかなしき うきよのくらし

職場でパワハラ・セクハラ研修があった。講師は大手法律事務所の弁護士。1時間半たっぷり語った。実際の訴訟で認定された損害賠償額は数十万円規模が多いようなので、訴訟にかかる費用を考えると、その手の訴訟はカネの問題ではなさそうだ。しかし、刑事事件となる場合もあるので、そうな

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たまに短歌 同窓かい?

たまに短歌 同窓かい?

「よ、しばらく」親しき会話交わしつつ
しばらくかかる記憶発掘

よ、しばらく したしきかいわ かわしつつ
しばらくかかる きおくはっくつ

先日、中学の同窓会に出席した。実家が中学時代から変わっていないので、そこに郵便で届いた案内に返信することができた。担任の先生を含めて14名が出席した。公立のごく普通の中学で、卒業後も付き合いのある人はひとりもいないので、こういう場から声がかかることが滅多にない

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たまに短歌 滋賀県長浜市・彦根市 2024年9月29日から10月2日 備忘録エンドロール

たまに短歌 滋賀県長浜市・彦根市 2024年9月29日から10月2日 備忘録エンドロール

いつになく記し置きたいこと多く
駄文重ねる秋の夕暮れ

いつになく しるしおきたい ことおおく
たぶんかさねる あきのゆうぐれ

見出しの画像は地元在住の松居清恵さんが趣味で描いたスケッチ画の作品「長濱浪漫ビール」の絵葉書。10月1日に歌を詠んで10月2日に投函。10月7日に手元に届いた。

わずか三泊四日だったが、長浜と彦根で楽しい時間を過ごすことができた。関係者の皆様に感謝する。noteのネタ

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たまに短歌 滋賀県彦根市 2024年10月2日 主流派の矜持

たまに短歌 滋賀県彦根市 2024年10月2日 主流派の矜持

昔から暮らしのなかで城仰ぐ
背筋が伸びて遠くが見える

むかしから くらしのなかで しろあおぐ
せすじがのびて とおくがみえる

宿をチェックアウトし、長浜駅を午前9時5分に発車する普通列車に乗る。米原駅で加古川行きの列車に乗り換えて、午前9時28分に彦根駅に着く。そのまま彦根城へ向かって歩く。天守が間近に迫ったところに滋賀縣護國神社があったので、とりあえず参拝する。神社の裏手に佐和多聞櫓を再現し

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たまに短歌 滋賀県長浜市9 2024年9月30日 絵に描いたような安直

たまに短歌 滋賀県長浜市9 2024年9月30日 絵に描いたような安直

神仏出世大名天下人
賽銭だけであやかるつもり

かみほとけ しゅっせだいみょう てんかびと
さいせんだけで あやかるつもり

天下人一夜限りの宴にて
明日は落武者夢の随に

てんかびと ひとよかぎりの うたげにて
あすはおちむしゃ ゆめのまにまに

見出しの画像は地元在住の松居清恵さんが趣味で描いたスケッチ画の作品「木杭に波打つびわ湖畔に佇む秀吉の居城・長浜城」の絵葉書。9月30日に歌を詠んで10

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たまに短歌 滋賀県長浜市8 2024年10月1日 観音の里

たまに短歌 滋賀県長浜市8 2024年10月1日 観音の里

観音を守る人在る里に住む
人の居る里心ある里

かんのんを まもるひとある さとにすむ
ひとのいるさと こころあるさと

白洲の『かくれ里』にはこうある。

私の場合は、菅浦から長浜市街へ向かう途中で高月に立ち寄った。その前に、長浜市街から余呉湖に向かう途中、木之本駅の踏切を渡ってすぐのところに大きな寺があるのを認め、帰りに参詣することにしていた。菅浦から高月に至る前にその浄信寺にお参りし、門前の

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たまに短歌 滋賀県長浜市7 2024年10月1日 かくれ里

たまに短歌 滋賀県長浜市7 2024年10月1日 かくれ里

誰が為に仏を守り神祀る
誰が為でなく我が為でなし

たがために ほとけをまもり かみまつる
たがためでなく わがためでなし

ここで竹生島と菅浦の位置関係を確認しておく。琵琶湖の北側の湖畔はかなり入り組んでいる。43万年前に形成された世界屈指の古代湖の一つで、地形としては丸くなってもよさそうなものだが、日本列島周辺の地殻活動はよほど活発らしい。湖底の地形も複雑だ。湖の最深部というのは、漠然と真ん中

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たまに短歌 滋賀県長浜市6 2024年10月1日 スガへいってくる

たまに短歌 滋賀県長浜市6 2024年10月1日 スガへいってくる

入り江にて幾歳続く営みを
沖の白波ただ見つめおり

いりえにて いくとせつづく いとなみを
おきのしらなみ ただみつめおり

再び梅棹忠夫の『行為と妄想』から引用する。

これは先日noteに書いた同書からの引用部分のすぐ後に続く文章だ。竹生島に行こうと思うなら、菅浦にも足を伸ばそうと思うのが自然かもしれない。しかし、私はそう思わなかった。地図を見ると菅浦に続く道が一方通行なのである。おそらく公共

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たまに短歌 滋賀県長浜市5 2024年9月30日 神の島

たまに短歌 滋賀県長浜市5 2024年9月30日 神の島

神の島往復船を予約する
端から縁は無いかの如く

かみのしま おうふくふねを よやくする
はなからえんは ないかのごとく

竹生島は「神の島」と呼ばれているが、私のように何も考えずに事前に往復の船を予約してやって来るような奴を神は相手にするものだろうか。

「信仰」が意味するところは人によって様々だろう。人それぞれであることが当たり前であるとは思うのだが、やはり、当事者意識というもの無しに当事者(

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たまに短歌 滋賀県長浜市4 2024年9月30日 弁財天の島

たまに短歌 滋賀県長浜市4 2024年9月30日 弁財天の島

弁天の琵琶の音いずこ本宅を
探し求めて島々巡る

べんてんの びわのねいずこ ほんたくを
さがしもとめて しまじまめぐる

長浜2日目は竹生島へ渡る。連絡船は往復で申し込むことになっていて、島の滞在時間は90分と決められている。時間で拘束されるのは嫌なので、90分で足りるかと心配していたのだが、大丈夫だった。

竹生島は湖北に位置する信仰の島で、宝厳寺と都久夫須麻神社がある。この島に参詣することも

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たまに短歌 滋賀県長浜市3 2024年9月29日 寺の守り

たまに短歌 滋賀県長浜市3 2024年9月29日 寺の守り

古寺の骨組み歪み床沈む
朽ちゆく広間床に鶯

ふるでらの ほねぐみゆがみ ゆかしずむ
くちゆくひろま ゆかにうぐいす

滋賀県湖北地域から福井県にかけて観音像を祀る寺院が多く立地していると言われる。

滋賀県は琵琶湖という県域の約6分の1を占める大きな湖を県の中央に擁し、穏やかな気候の土地を想像しがちだが、湖北はけっこう雪が降る。道路に融雪装置が埋設されているし、少し山の方に入るとスキー場の看板が

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たまに短歌 滋賀県長浜市2 2024年9月29日 大きな句碑のあるところ

たまに短歌 滋賀県長浜市2 2024年9月29日 大きな句碑のあるところ

芭蕉の句お国自慢の句碑建てた
読めない文字が値打ちなりけり

ばしょうのく おくにじまんの くひたてた
よめないもじが ねうちなりけり

何年か前から、旅先で絵葉書を買って歌を詠んで自分宛に送るのを楽しみにしている。9月29日にヴァイツェンビールを飲んだ長濱浪漫ビールのビアハウスで絵葉書を3枚買った。その日の夜に一枚の葉書に何首か詠んで、翌30日の午後に宿の近くの郵便局で投函した。それが今日届いた

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たまに短歌 滋賀県長浜市1 2024年9月29日 長浜にて

たまに短歌 滋賀県長浜市1 2024年9月29日 長浜にて

長浜とアウグスブルク尼崎
ヴァイツェンビール赤き思い出

ながはまとあうぐすぶるくあまがさき
ゔぁいつぇんびーるあかきおもいで

9月29日から三泊四日で滋賀県長浜市を訪れた。人生の第四コーナーを過ぎているので、身体が生理的にも経済的にも自由に動くうちに、予て思っていたことを一つでも多く実現しておこうと思っている。それで長浜へ行ってきた。

以前にも書いたが、昔、イギリスのマンチェスター大学に留学

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