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万葉集巻頭歌

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記事一覧

巻20巻頭歌:『心遣い』

あしひきの
山行きしかば
山人の
朕に得しめし
山づとそこれ

(「万葉集」巻⑳・4293)
元正天皇

『心遣い』

険しい山を行けば
山に住む 
その土地の人が
私のためと
木の枝で作った杖を
お土産にくれた

歩き慣れない
私の事を
気遣ってのことだろう

土産はもちろんだが
その心遣いこそが
私には嬉しかった

《巻20概要》
万葉集の最終巻。
この巻には東国から兵役にかりだされた
「防人

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巻19巻頭歌:『春苑にて』

春の苑
紅にほふ
桃の花
下照る道に
出で立つ娘子

(「万葉集」巻⑲・4139) 
大伴家持

『春苑にて』

春の苑が
夕陽によって
薄紅に染め抜かれてゆく…

そして
桃の花の色を
鏡のように映し込み
照り輝く道に
ふと、立ち現れた
一人の乙女

それは、うつつの人か
私の中の空想美人か…

それとも、桃の精霊か

《巻19概要》
家持の歌日記のうちの1冊。
この巻では家持の秀作が多く収めら

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巻18巻頭歌:『舟を貸せ』

奈呉の海に
舟しまし貸せ
沖に出でて
波立ち来やと
見て帰り来む

(「万葉集」巻⑱・4031)
田辺福麻呂

『舟を貸せ』

奈呉(なご)の海には
美しい波が立つことが
多いという…

そこに住む漁師よ
奈呉の海に出るために
舟をしばらく貸してくれ

そこに
美しい波が立っているかと
見て帰ってこよう

【メモ】
奈呉の海…現在の富山県射水市(いみずし)
新湊(しんみなと)あたりの海

《巻18

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巻17巻頭歌:『松原にて』

我が背子を 
我が松原よ 
見渡せば 
海人娘子ども 
玉藻刈る見ゆ

「万葉集」巻⑰・3890 
三野石守

『松原にて』

私の愛しい人を
私が待つ 
松原から見渡せば
さんさんと降り注ぐ
陽光の下
この海で
海女を生業とする乙女たちが
珠もように美しい
海藻を刈っている様子が見えている

愛しい人さえ
景色の一部にしてしまう
美しい景色が
この松原にはあった

《巻17概要》
巻1~16が「

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巻16巻頭歌:『美しい軌跡』

春さらば 
かざしにせむと 
我が思ひし 
桜の花は 
散り行けるかも

(「万葉集」巻⑯・3786)

『美しい軌跡』

春になれば
私のものとして
頭に挿して
かんざしにしようと思っていた
桜の花は

もう、散ってしまった

短い命を
風に委ねて
美しい軌跡だけを
私の心の中にだけ残して
散ってしまった

《巻16概要》
「有由縁雑歌」とあり、歌の全後に歌の元となった長い物語などが収められてい

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巻15巻頭歌:『君と離れる時』

武庫の浦の 
入江の渚鳥  
羽ぐくもる 
君を離れて 
恋に死ぬべし

(「万葉集」巻⑮・3578)

『君と離れる時』

武庫(むこ)の浦の
入り江の渚に住む鳥が
その大きな羽で
優しく雛を包み込むように

その腕で
大事に大事に
私を優しく包み込んでくれた
貴方が
海外に行ってしまうなんて…

こんなにも大好きなに
こんな離れ方をすると
切なさと恋しさで
私、死んでしまいそう…

《巻15概

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巻14巻頭歌:『光と共に』

夏麻引く 
海上潟の 
沖つ渚に 
舟は留めむ 
さ夜ふけにけり

「万葉集」巻⑭・3348

『光と共に』

今日は
海上潟の沖の渚に
舟を留めよう
もう、夜は更けた

明日の日の出を待って
また船を漕ぎだそう

潮風浴びて

前へ、前へ…

《巻14概要》
東歌(あづまうた)と呼ばれる東国の歌を収める。
庶民の労働歌として労働の際に歌われていたと思われる歌も収められている。
当時の方言を垣間見

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巻13巻頭歌:『春風の吹く時』

冬ごもり 春さり来れば 朝には 白露置き
夕には 霞たなびく 風の吹く 木沫が下に うぐいす鳴くも
「万葉集」巻⑬・3221

『春風の吹く時』

冬が季節の裏側に隠れ
春がやって来た
この時

朝は草木に
珠のような白露が置かれ
夕方には
霞が棚引いている

そして
春風の吹く
梢の下では鶯が
綺麗な声で鳴いている

《巻13概要》
「雑歌」「相聞」「問答」「比喩歌」から成る巻。
主に長歌(五七

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巻12巻頭歌:『想いを馳せきれずに』

我が背子が 
朝明の姿 
よく見ずて 
今日の間を 
恋ひ暮らすかも

「万葉集」巻⑫・2841

『想いを馳せきれずに』

明け方に出勤してゆく
愛しい貴方のお姿を
よく見なかったから
今日一日
想いを馳せきれずに
恋しさを募らせて
暮らすことになりそう

早く貴方に逢える
夕方にならないかな…

《巻12概要》
「古今相聞往来歌」の下巻。
巻11の姉妹巻。巻11に比べ、比較的新しい歌を収める。

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巻11巻頭歌:『其処の人』

新室の 
壁草刈りに 
いましたまはね
草のごと 
寄りあふ娘子は 
君がまにまに

「万葉集」巻⑪・2351

『其処の人』

其処の人、其処の人

遠巻きに見てないで
新しく建てる家の
脇に生える草を
刈りにおいでなさいな

そよ風に吹かれた
草のように優しく
貴方になびいてくる乙女には
どうぞ、思いのまま
心も身体も通わせてください

私たちは口出ししませんから…

《巻11概要》
「古今相

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巻10巻頭歌:『霞から朧へ』

ひさかたの 
天の香具山 
この夕 
霞たなびく 
春立つらしも

「万葉集」巻⑩・1812

『霞から朧へ』

神々しく鎮座する
夕暮れ近い
天の香具山に
今、霞が棚引いている

その様は
天女が羽衣をまとうようで
美しい…

霞から朧へと
名前が移り変わる時
流れる風の片隅で
私は春を感じていた

《巻10概要》
巻8と同じく四季分類されて「雑歌」「相聞」に分けられる。
こちらは作者未詳歌を収

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巻9巻頭歌:『鹿に馳せる想い』

夕されば 
小倉の山に 
伏す鹿し 
今夜は鳴かず 
寝ねにけらしも

「万葉集」巻⑨・1664
雄略天皇

『鹿に馳せる想い』

夕暮れ時に
小倉山に帰りし鹿は
今夜は鳴かない
妻を呼ぶこともなく
寝てしまったのだろうか

それとも
妻に逢えた安心感で
早くも眠りに就いたのだろうか

ひととき
その声を聞かないだけで
その身を案じてしまう

《巻9概要》
「雑歌」「相聞」「挽歌」の三大部立を収め

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巻8巻頭歌:『春の喜び』

石走る 
垂水の上の 
さわらびの 
萌え出づる春に 
なりにけるかも

「万葉集」巻⑧・1418 
志貴皇子

『春の喜び』

岩に当たり
柔らかな光を受けながら
清らかな雪解け水が
右へ左へ走りゆく
山奥の小さな滝

その上の斜面で
若緑の蕨が
芽吹く春になったのだな

生きとし生けるものの活力が
充満する
暖かな春になったのだな

《巻8概要》
春夏秋冬に四季分類され、それぞれ「雑歌」と「相

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巻7巻頭歌:『天空の海を見上げて』

天の海に 
雲の波立ち 
月の舟 
星の林に 
漕ぎ隠る見ゆ

「万葉集」巻⑦・1068

『天空の海を見上げて』

天空の海に
逆巻きながら
雲の波が立っている

そして、そこを伝い
大いなる宇宙に住む
誰かが漕ぐ月の舟が
星の林に分け入って
隠れてゆくのを
今、この地上から
見上げている

《巻7概要》
「雑歌」「比喩歌」「挽歌」で構成。
575777の形式の「旋頭歌(せどうか)」も収められる

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