春さらば
かざしにせむと
我が思ひし
桜の花は
散り行けるかも
(「万葉集」巻⑯・3786)
『美しい軌跡』
春になれば
私のものとして
頭に挿して
かんざしにしようと思っていた
桜の花は
もう、散ってしまった
短い命を
風に委ねて
美しい軌跡だけを
私の心の中にだけ残して
散ってしまった
《巻16概要》
「有由縁雑歌」とあり、歌の全後に歌の元となった長い物語などが収められている。
ナンセンスな歌や人を嘲笑う歌など、他の巻と趣を異にしており、万葉集の中でも異彩を放つ一首でもある。
一説には、15巻本の付録だったと言われている。
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