春の苑
紅にほふ
桃の花
下照る道に
出で立つ娘子
(「万葉集」巻⑲・4139)
大伴家持
『春苑にて』
春の苑が
夕陽によって
薄紅に染め抜かれてゆく…
そして
桃の花の色を
鏡のように映し込み
照り輝く道に
ふと、立ち現れた
一人の乙女
それは、うつつの人か
私の中の空想美人か…
それとも、桃の精霊か
《巻19概要》
家持の歌日記のうちの1冊。
この巻では家持の秀作が多く収められている。
巻頭の桃李の歌をはじめ、越中から帰京後の「絶唱三首」と呼ばれる歌が収められているのもこの巻である。
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