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通学路
僕には青春は高過ぎた。
春に見た桜が散り敷くその道も、夏に見た水溜りを直ちに蒸発させるその道も、秋に見た暖色掛かったアスファルトの道も、冬に見た様々な思い出を乗せた轍を残す道も、0〜5、7〜9、12歳の頃見た札幌のフワフワした雪とその雪を機械的に溶かす道も、去年見た東京のネオンが僕を今日まで導いてくれた道も、道も、道も、
僕には
あの頃の
通学路に見えた。
寂しげに1人で登校した日、まだ友達も居なくて新しい環境に苦戦してて、でも自分なりに生き残る手段とやらを模索してた時の
通学路
何気ない会話から偶然僕に似た友達が数人出来て、本当は僕本来の通学路とは違う道だったけど、無理して一緒に帰った
通学路
初めてバレンタインデーにチョコを貰って、友達に見つからない様に友達が完全に見えなくなった後に1人でその複数のチョコを食べ比べながら、初めてバレンタインをバレンタインとして楽しめた
通学路
両親が喧嘩して、その流れで僕にまでその火の粉が飛んで来て関係の無い事で怒られて、飛び出す様に家を出て、飛び出た涙を疾走風で乾かした
通学路
産まれて初めて僕の事を本質的に愛してくれたあの子と一緒にあの子の家まで下校した後に、
僕が嫌いな同級生の後ろで、その同級生にさっきあの子と一緒に帰ってた事がバレない様にゆっくりとゆっくりといつもの数倍の時間を掛けて帰った
通学路
高校受験が近付いて皆んな勉強に取り憑かれてた時に、1人で霜降り明星のネタの考察をしながら帰った
通学路
高校に入学して、今まで僕がこの世界で生き残る為に必要だった友達が全員消えて、全然仲良く無い女ウケ以外考える事が出来ない世界一おもん無い人間と無理矢理感情を押し殺して帰った
通学路
高校を不登校になる前に組んでたバンド(アスター)の文化祭で演奏する曲決めが中々終わらず、結局演奏する曲が決まらなくて、
「RADとかKANA-BOONとかじゃなくて、やっぱこれでしょ!!」
とYokai jakiのkillbillをイヤホンをせずに爆音で流しながら自転車を爆走させて帰った
通学路
高校を退学する前に、組んでいたバンド(アスター)のキーボードのめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃ可愛かった身長が僕より約20cmぐらい低いめっちゃめっちゃ可愛いかった女の子から告白されて、でも僕は当時もう鬱気味で何も考えたく無かったから、
「ちょっと時間を下さい。」
とだけ言ってそのまま理想と現実のギャップに殺されながら帰った
通学路
引きこもりながらなんとか外に出て、なんとか汚いセロトニンを分泌させて、なんとか小論文、面接して、なんとか合格した通信の入学式に母が運転する車に乗りながら行って、帰って来て、もう久しぶりに人と会ったからめっちゃ疲れて、お風呂も入らずにそのまま寝ようとしてた時に「久しぶりにあの頃の通学路を見に行くか」となって、素足にサンダルを装備し、パジャマ姿で数年振りにあの頃の通学路を歩いてみた
通学路
全部綺麗だった。
全部汚かった。
全部思い出だった。
全部後悔だった。
何処と無く香るその腐敗臭は、
僕に青春の高さを存分に教えてくれた。
僕を愛してくれた人も居た。
僕を守ってくれる人も居た。
僕を助けてくれる人も居た。
キスとかしたかったな。
セックスはしなくて良かったな。
でも、
もっと遊びたかったな。
青春って。青春って。青春って、、、
僕には青春は高過ぎた。
だから余り好きでは無かった。