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閑文字

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詩をまとめています。楽しんでいただけたらうれしいです。
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#創作大賞2023

【詩】取っ散らかる

【詩】取っ散らかる

「生まれかわるならどうなりたい?」なんて疑問を持つことのないあなたの強さは、遭難者を探す救助隊の懐中電灯みたいに、容赦なく明るい。まっすぐすすんで、木、石、木、木、石、草、木、片端から照らし出して、効率的に確実に光をぶつけて見つけようとしてくれる。月に代わって遂行よ。強い言葉が苦手なんじゃなくて、強い言葉を押し出すために必要な強い声が苦手だとわかったんだ。正しさの中にある暴力性に怯えてしまうのは、

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【詩】染み氷る

【詩】染み氷る

夏オブ海、の中につくった、冬オブザ氷、には縮こまった光がぎゅうぎゅう詰めになっている。局地的に刃物が降っている。ぼくの腕にも肩にも心臓にも刺さることは無くて、明かりに吸い寄せられて窓にぶつかる蝉みたいに、ぼくの骨を叩くだけ。痛みはないし、死ぬこともないけど、うるさいんだよ。音がなによりも苦痛だと知らないんか。氷は夏にではなく、蝉の声に溶かされる。夏オブ海、の中につくった、冬オブザ氷、が溶けて、日本

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【詩】ぐずぐずの傷

【詩】ぐずぐずの傷

月光に月より月をかんじてしまうのは、にんげんに見えているのは光だから。光って影なのに光ってるから美しい。宇宙の隅々から地球に自己アピールが届いている。星々の承認欲求で輝く夜空を眺めて、愛を深めるにんげんがいる。夜空みたいに光を陳列した宝石店を強盗する、白昼堂々闇バイト。犯行映像視聴者提供。視神経の半分はタピオカカメラと繋がってんのかな。おもひでと言えば液晶の写真。光を取り込み過ぎて、金閣寺よりも金

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【詩】喰い破る

【詩】喰い破る

向かってくる腕を、反射的に喰い破る。間伐材みたいに落ちた右腕を見て、じっくりしゃぶれる二の腕を一本無駄にしたことを後悔する。痛みで正気に戻ったトコに、口内の骨片を飛ばして怯ませて、跳び蹴りで倒して、左の太ももを喰い破る。大腿筋ってデカくて頑固だから、何回にも分けて喰らいついて破り捨てていく。動けなくしたら骨に守られてるトコを喰い破る。どこもクソ不味ィな。腐ったミカンと燃え残った樹の間の嫡出子みたい

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【詩】違和感を演じられる真面目な人

【詩】違和感を演じられる真面目な人

商品化するって、自分の一部を結晶化させていくことで、
大腸みたいな、とても見せられるような見た目をしていないもの
でなくて、スワロフスキーコラボみたいなもので、
そうやってあなたは観光地になった
結晶化させた右腕を太陽に透かすと、虹を纏った光が
路地裏にも、密林にも、天国にも、角部屋にも、
あたしが呑み下して溜まって倦んだ、粘性物質にも届く
あなたは時代が違えば、神に捧げる儀式を執り仕切っていたん

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【詩】アドレシェンス

【詩】アドレシェンス

指先一つで送りこむ 線状降水帯 
飛沫をシミュレーションする スローモーション映像の動き
ニュースによると 川が氾濫して 道路が冠水して
樹を薙ぎ倒す 轟音と物量で圧倒している
襲い尽くして わたしの偉大さと 人間たちのちいささを分からせる
淡い黄白色をした教室のカーテンが、ぶわっとなびくのを見るように、
窓の外の飛雨を見る。
太陽に照らされていたものに当たり散らす音は、
ぼくの脳に、無意味と判断

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【詩】森の家

風が頬を撫でるとき、僕は地球を撫でていることになるのだろうか?
草花に触れることのなくなった僕のことも、地球は変わらず
撫でてくれます。風に吹かれるススキの葉を見ていると、
あなたを思い出します。買うべき本と同じ光を、「あ」という感覚で捉えて
カメラを構える。光は便利だ。光は、お金みたいに変換できて、とても便利だ。
みんなみーんな、光を求めて、夜は嫌われ者になった。
ピカチュウは人気者になった。

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【詩】茶化す

春はその年の仕事を終えたと思い、夏は低気圧の頭痛に悩まされている時期
季節の目を盗んで開けた窓から吹きこむ風は、
エアコンの風みたいに剥き出しではなかった
カドが剥き出しになった音程で
月のように頭の回転が止まって、喉が詰まって言葉が絡まって
心臓が地下室のように凍る
という経験を嫌という程してきたのに
自分からその音程が出ることがある
だから声帯を捨てることがやさしさだと思っていた
しかし、茶化

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【詩】違和感を演じられる真面目な人

ベロは表面にある内臓。
内臓は生体活動に特化しているから、
人に見せられる見た目をしていない
だから、ベロを出していると違和感がある
  気温三十度を超えた五月の舗装路の上
  突然変異種のヨガのポーズ
 オレの才能ってこんな形なんだぜ
星空を纏ったドレスは
飽きられてしまって、
孵化厳選で明かした夜の
チューブトップに着替える
原石のままのネックレスをする。
まだ、窓を開けられる時期だから
風を

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【詩】月の岬からDIVEする

時間にDIVEしている
魚めがけて海中にとび込む鳥みたいに
DIVEしている
時間にDIVEしつづけている
魚めがけて海中にとび込む鳥みたいに
DIVEしつづけている
かみさまは
気軽に時間にとび込む人間たちに
魚めがけて海中にとび込む鳥みたいな、
欲望に忠実な滑稽さを感じている
ビルの上から、サイダーにDIVEするのは躊躇する
立ちのぼる泡々が発する音は、
悪魔の寝息のように
ぬめぬめしていて、

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【詩】かめら

カメラといえばスマホの世代は、想い出がセピア色じゃない
いつからか写真を撮っても、
映像が手の中に残るようになった
チョコレートを口に入れて
ちょこれいと、としかいえない味になるように
混乱する
墨をはかれたように一気にひろがる夜に、
地面から洪水のように雨が降っているゆめで、
感じた恐怖が、
目が覚めても身体に残っていて、この感情が
現実なのかわからない
雨の度に、宇宙は溶けているのかもしれない

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ヴァレンタイン

冬を、逆手で握って、ふりあげて、
自分の太腿に突き立てるとあらわになる
春の温度
青空にも、驟雨にも、嘘をつかれているようで、
でも、もともと地球は宇宙しか見ていないというような
温度
温度だから実体なんかなくって、
体感した事実だけが、私の手の中にある
自分の骨を、有害な男らしさで打ちつけて、
舞う粉塵を吸い込んで、くしゃみが出る
思ったより危険度が高くて、
もうひとつ出る
胃から這い上がる溶け

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僕は歩くのが遅い

僕は歩くのが遅い
何車線もある大きな道路の脇を、ちいさく歩く
車がビュンビュン通り過ぎて、バイクは
無数の爆発を起こしながら進んで、
ママチャリが通って、学生が下校していく
僕はススメバチの死骸にぎょっとしている
ススメバチの濃黄色には、
見るだけで毒がありそうで、避けて歩く
よく見たら“Have a NICE DAY”と書いてある
極彩色で巨大な看板
駐車場をはさんで向かいにある、黒い建物に波打

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