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【詩】喰い破る

向かってくる腕を、反射的に喰い破る。間伐材みたいに落ちた右腕を見て、じっくりしゃぶれる二の腕を一本無駄にしたことを後悔する。痛みで正気に戻ったトコに、口内の骨片こつへんを飛ばして怯ませて、跳び蹴りで倒して、左の太ももを喰い破る。大腿筋ってデカくて頑固だから、何回にも分けて喰らいついて破り捨てていく。動けなくしたら骨に守られてるトコを喰い破る。どこもクソ不味ィな。腐ったミカンと燃え残った樹の間の嫡出子みたいな味がする。台風一家は、「今日の晩御飯は支柱シチューだよ」って言って畑を喰い荒らす。つくったものを喰い荒らされると、神様もこころを痛める。爺さんの煮凝った皮膚みたいなAIを喰い破って讃歌が噴き出る。水みてェだ。透明で悲しくなるくらい薄くて、血の色の流れが速くなる。たぶん水だな。肌には気持ちィな。夏の肌は固ェな。樹齢400年くらいか。地球が汗ばんできたトコから喰い破る。日焼け止めみたいなのが垂れる。黒だ。高級車みたいな暗い色だ。六畳のマーブル模様にへたりこむ。あぁ、アゴいてェな。

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