ミモザの候 6: 金剛杖と納経帳
父の棺には、母とまわった四国八十八か所のお遍路で使った金剛杖と納経帳も納められた。赤い織のカバーがかかった納経帳は父の胸元に置かれた。棺いっぱいに入れられた真っ白な花々、その合間から、棺を閉じる最後の瞬間まで、納経帳の赤色がかすかに見えていた。
斎場は驚くほど混んでいた。こんな真冬に、こんなところに、こんなに大勢の人々が次々と集まっていた。荼毘にふされる時間も予定より長くかかった。とはいっても、長くゆっくり荼毘にふされるというのではなくて、各家、それぞれのお式に時間がかかっ