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ミモザの候 2: こんなに空が高い日には...

海を渡る電車から眺めた空は、とても高く、澄んでいて、春の気配を感じさせていた。

海が果てしなく空へと続き、天へと開かれていた。穏やかに晴れた2月の午後だった。

「あぁ、こんなに空が高くて気持ちがいい日なら、私だって空を渡ってもいいなぁ」と思った。

翌朝早く、父は空を渡った。

父とよく一緒に天を仰いだ。空の色や雲の形、星空を一緒に眺めた。

一報をきいて、「そうだよね。こんなに素敵な日なら、お父さんだって空を渡りたくなるよね」と思った。

たぶん、次回の帰省までもたないと、覚悟して父と別れた。

あの日の空が、一緒に眺めた最後の空だった。

父の「さようなら」だった。

2020年2月
2022年8月26日 記


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