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#読書感想文

持ってる安部公房全部読む ー砂の女ー

持ってる安部公房全部読む ー砂の女ー

今までは本題に入るまで何やかやと書いていたが、早々に安部公房の話をする。面倒になった訳ではない。

2023年6月23日、砂の女を読む。こちらも再読。こちらは安部公房を読んだことのない人も、タイトルを聞いたことがあるのではないだろうか。みんな大好き砂の女。私が初めて読んだ安部公房作品もこの本であった。

この物語は、昆虫採集が趣味である教員の男が砂丘へ出掛けた男が帰りのバスを逃し、砂に埋もれていく

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持ってる安部公房全部読む ーけものたちは故郷をめざすー

持ってる安部公房全部読む ーけものたちは故郷をめざすー

段々と寒くなってきた。北では雪虫が多かったり、南ではカメムシが多かったり。今年の冬はどうなるのだろうか。雪が多いと通勤が大変だから、出来ればあまり降らないで欲しい。今回は、厳しい寒さの中の安部公房作品。

2023年6月19日、けものたちは故郷をめざすを読んだ。この本は満洲国で育った少年が、ソ連軍の侵攻により崩壊寸前のそこからまだ見たことのない故郷・日本をめざす冒険、というには過酷すぎる道のりを謎

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持ってる安部公房全部読む ー夢の逃亡ー

持ってる安部公房全部読む ー夢の逃亡ー

昨日、古本市に行ってきた。安部公房は全集が置いてあるのみだったが、全巻並んだそれを見て興奮してしまった。安部公房全集は装丁もシンプルで格好いい。色んな作家の全集を見ていると、それぞれの味が出ていていいなと思う。装丁も含めての本だから、そういうところも好き。今日は、ちょっと不気味な表紙絵の安部公房について。

2023年5月5日、夢の逃亡を読む。これは、安部公房が25 歳くらいの時に書いたものを集め

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持ってる安部公房全部読む ー燃えつきた地図ー

持ってる安部公房全部読む ー燃えつきた地図ー

私は、日記でもTwitterでも本の話をすることが多いが、漫画も好きである。最近は、panpanyaブームが来ている。定期的に訪れる、このpanpanyaブーム。私は全巻持っている、めっちゃ好き。頭を空っぽにして読めるし、シュールで何処となくノスタルジーで大好きなのだ。絵も可愛い。じわじわ来るので、良ければ是非読んでみて欲しい。じゃあ今日も安部公房。

2023年4月2日、燃えつきた地図を読了。

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持ってる安部公房全部読む ー人間そっくりー

持ってる安部公房全部読む ー人間そっくりー

一昨日、石巻で開催された一箱古本市に行ってきた。本当は出店したかったのだが、入院してしまったためにしっかり準備が出来ないと思い、今年は見送った。ここにいる人たち、ジャンルは違えど皆んな本が好きなんだなと思うと、嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。皆んな、普段は何処にいるんだろう。そして私が見つけられなかっただけなのかも知れないが、安部公房とは1冊も出会えなかった。やはり来年は絶対に出店するしかない。ガ

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持ってる安部公房全部読む ー石の眼ー

持ってる安部公房全部読む ー石の眼ー

最近、私のTwitterのTLで安部公房を見かける頻度が多くなってきて、ついリプライをしてしまう。そうすると、私があまりにも安部公房安部公房と言うから、つい手に取ってしまったとか、懐かしくなってとか、読んでみたくなってという答えが返ってくるようになった。こういうのってすごく嬉しい。記事を読んでくれるだけでも有り難いのに、更に読んでくれるなんて……私はいつもみんなに支えられているなと思う、本当にあり

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持ってる安部公房全部読む ーR62号の発明・鉛の卵ー

持ってる安部公房全部読む ーR62号の発明・鉛の卵ー

この、持ってる安部公房全部読むについてのnoteも漸く3分の1まで来た。大体週一回くらいのペースで更新していきたいと思っているので、年内には終わる予定。よくよく考えると、読み始めてから書き終わるまで一年以上安部公房に触れていることになる。もうこれは、すっかり仲良しである。でも、アレクサンドリア四重奏/L・ダレル(河出書房新社)に出てくるクレアという女性が"人の承諾なしに勝手に愛するなんて、ほんとう

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持ってる安部公房全部読む ー無関係な死・時の壁ー

持ってる安部公房全部読む ー無関係な死・時の壁ー

療養期間も終わり、今週火曜から仕事に復帰した。落ちた筋肉と体力の影響をひしひしと感じている。
さて私は前回、短編集は読む分には楽しいけど感想を書くときに困ると言ったが、今も困っている。水中都市・デンドロカカリヤについて書き上げた後、本棚に向かって気が付いた。……次も短編集だった。どれも面白かったのだが、今回は大人しく表題作の一つ『無関係な死』について書くことにする。

2023年1月15日、無関係

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持ってる安部公房全部読む ー水中都市・デンドロカカリヤー

持ってる安部公房全部読む ー水中都市・デンドロカカリヤー

前回から3週間近く開いてしまった。日記には書いていたのだが、コロナではない別の疾患で手術が必要になり、1週間ばかり入院していた。お陰様で手術も無事に終わり今は療養中、来週から仕事復帰の予定。入院中は村上春樹、谷崎潤一郎、大江健三郎、レオ・ペルッツ、アグアルーザを読んだ。今はフォークナーを読んでいる、ジョー・クリスマスが色々と拗らせてるなと思いながら。勿論それだけでは語れない人物なのだろうが。では安

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持ってる安部公房全部読む ー第四間氷期ー

持ってる安部公房全部読む ー第四間氷期ー

気が付いたら8月も後半、相変わらず暑い。前回の飢餓同盟で「日記を書き始めた」と書いたが、今のところ毎日きちんと書いている。ただ、原付の鍵を落としたとかドアに額をぶつけたとか、バスを乗り間違えそうになったとか格好悪いことばかり書いている気がする。日記を書くことで、変わり映えしないと毎日だと思っていたけど、意外とそうじゃないということに気が付いた。では、今日も安部公房の話をする。

2022年12月1

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持ってる安部公房全部読む ー飢餓同盟ー

持ってる安部公房全部読む ー飢餓同盟ー

最近、noteで日記を書き始めた。別に私の日常なんて誰も興味がないだろうが、日記は何かを書きたい欲を満たすのにちょうど良いことに気付いた。調べてみると、日記を書くことは、文章力の向上にも繋がるらしい。長さや内容に差は出るだろうが、今月は出来るだけ書きたいと思う。本の話と食べ物の話くらいしかしないだろうけど。そんな今は、クンデラの存在の耐えられない軽さを読んでいる。みんな誰かを好きで、愛人がいたりす

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持ってる安部公房全部読む ー壁ー

持ってる安部公房全部読む ー壁ー

「何か美味しいケーキが食べたい」と思い、今日は用事を済ませた後にタルトを食べてきた。私が選んだのは、ウィークエンドシトロン。アイスティーを飲み、ナボコフのカメラ・オブスクーラを読みながら食べた。甘酸っぱいタルトは、とても美味しかった。そして丸善に寄り、新潮2023年9月号を購入した。テロと戦時下の日記リレーの、アンドレイ・クルコフの日記を読みたかったのだ。誰かの日記を読むことが、こんなに面白いとは

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持ってる安部公房全部読む ー他人の顔ー

持ってる安部公房全部読む ー他人の顔ー

今年の夏は暑い。こんな時は涼しい部屋で本を読む貪るように読んだり、何か好きなことをして過ごすのがいい。という訳で残り19冊分このまま書いていきたいと思う。私は文学部を出ている訳ではないし、もちろん安部公房の専門家ではない。ただ好きで読んだだけだし、ただの一個人の解釈と感想である。にも関わらず、色んな人に読んでもらえたみたいでとても嬉しい。これで誰か一人でもいいから興味を持って安部公房を読んでくれた

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辛さとか重さとか、渇きとか。そういうものを、ゴツゴツした不器用な両手で優しく掬い上げてくれる

辛さとか重さとか、渇きとか。そういうものを、ゴツゴツした不器用な両手で優しく掬い上げてくれる

地元の書店員・佐藤厚志氏が芥川賞を受賞した。あの日をテーマにした小説、荒地の家族。砂浜に埋もれたコンテナが印象的な表紙。ようやく読んだので、思ったことを書く。

これは今から12年前の、あの災厄を境に人生が変わってしまった沢山の家族、その内の一つの話。私たちの目に触れないだけで、こういう話は沢山あるんだろう。あの災厄の後で当事者たちがどう生きていくか、生をどう営んでいくか。その中に失ったものは、死

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