記事一覧
シャーロット・マクラウド編『聖なる夜の犯罪』
人気ミステリー作家のシャーロット・マクラウドが編集した書き下ろしアンソロジー。“当代きっての巨匠たちばかり”らしいけれど、半分も知らないのは僕の不勉強さゆえか。
きっちりした本格物から怪談めいた幻想小説(聖夜に亡霊が出るのはディッケンズの昔からのお約束だ)まで、多彩な作品が揃っていて、いかにもクリスマスらしい賑わい。
クリスマスにはミステリーがよく似合う。
同趣旨のアンソロジーで先行するもの
ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』
創元推理文庫で新訳が出ていますが、中学生の頃に買った古いのを引っ張り出して読み直しました。
いささか古めかしい訳ですが読みにくくはなく、ストーリーの面白さに一気読みでした。
童謡の見立て殺人という、ミステリの定番である形式の嚆矢であり、クリスティ『そして誰もいなくなった』に先んじること10年、まさに時代を切り拓いた傑作。
また名探偵ファイロ・ヴァンスの友人であり物語の語り手には作者と同じS.
梨木香歩『からくりからくさ』
フォローしているnoterのしおりさんが、志村ふくみさんの展覧会鑑賞の記事で言及されていたのが、この作品を知ったきっかけでした。
民藝の流れにある志村ふくみさんなので、この小説も、華やかさはなくとも丁寧な暮らし、を描いたものなのかなと勝手に思い込んで読んでみようと手に取りました。
作品の冒頭しばらくは、そんな思い込みを裏切らない、ゆったりとした筆致で若い女性たちの暮らしが描かれていて、表紙のイ
辻邦生『黄金の時刻の滴り』
「もう一度、生きているこの人生のさなかから、何か〈物語〉に生命を吹き込む〈詩〉を掴みとる」(「あとがき」)という試み。
物語が、単なるストーリーに堕せず、人生をかけた一瞬の光芒として輝くその瞬間の美しさ。一篇一篇が短いがゆえに、その刹那の光の美しさも目映くて濃い。
12人の作家を取り上げて、その作家らしいフィクショナルなエピソードなども交えながら、その作家が物語に魂を注ぎ込む姿を描いて、小手先