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ほんのひととき編集部が気になった記事

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ここでは、旅と本のウェブマガジン「ほんのひととき」の編集部が気になったnoteをまとめています。おもに、旅や文化歴史にまつわるもの、本や書店を紹介したもの、ほんのひとときの記事を…
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#エッセイ

「おむすび、ぶらり旅」、今回は渋谷編です

「ほんのひととき」さまで短期連載をさせていただいている、「おむすび、ぶらり旅」。 mg.編集長かわかみとリレー形式、イラスト五嶋奈津美のタッグでお送りしているこの連載も、 今回で4回目。私に2度目の番がやってきました。 再開発が進む渋谷。 初めましての商業施設に戸惑い、何度となく使った渋谷駅が迷路のように感じられて出られなかった日の焦りや孤独、劣等感などが忘れられなくて、それをいつか文章にしたくて、今回のおむすびを探す地に選びました。 結果、「焼むすび」という、目に新しい

選ばれなかった僕らが描く虹は何色か? 18年後のthe pillows

図工の授業で絵を描くときに、筆をバシャバシャ洗うバケツがあった。あのバケツには「筆洗(ひっせん)」という名前があるらしい。画用紙に描かれる鮮やかな絵の具とは対照的に、筆洗はどんどん濁っていく。描き進めるうちに混沌を極める、色のゴミ箱。 2001年、僕は中学生だった。バラ色の日々、みたいな表現があるけど、あの頃の僕の毎日を色に例えるなら、まるで筆洗のようだったと思う。 団体行動が苦手で、ストレートに学校が嫌いだった。授業を受けるのも、体育で行進するのも、合唱を歌うのも、耐え難

人と触れ合うことで得られる大切な感情

旅行にほとんど行くことができなかった私だけれど、旅先でしか出会えないと思っていた景色や文化に、自宅にいながら触れることができる。 「ほんのひととき」さんのnoteは、そんな素敵な世界を毎回届けてくれます。 それが今回は、タイトルに私の知っているお店の名前があって、とてもびっくりしました。 散歩をするようになってから、地図をよく見るようになって、気になるところがあれば、いつか行ってみようとチェックしています。 そんな中のひとつに「らいおん商店」さんがありました。 地図に「

文学フリマにはじめて行って感動が止まらない人の日記

文学フリマに憧れてはや数年。2024年12月1日のきょう、念願かなって初参加しました! 出店はせず、遊びに行くだけですが、そもそも文フリ自体未経験で、膨大なわくわくと少しの緊張。パートナーを連れていくには遠いし私の趣味に寄りすぎているので、ひとりで行くと決めてチケットをとり、当日を迎えました。 実は、どうやってまわればいいのか、コツも作法も何にもわかっていなかったんです。だからあまりに不安で事前にnoteまで書いたんですが(出店しないのに書くひと、いるんか?)、結論、そん

シェア型書店にて、一箱だけの小さな本屋さんをはじめました。

本を読むのが好きなのはもちろんだけど、小さな街の書店に立ち寄り、背表紙をゆっくり眺めながら本を選ぶ時間も同じくらい好き。ハッと惹かれる一冊との出会いは、その本屋さんに足を運んだからこそ得られるもの。その時の気分や読みたい本によって選び取る本が変わるのも、好きなポイントの一つだ。 いつか、小さな街の本屋さんを開いてみたいな、と密かに思っている。この世の中に数えきれないほどある本でも、なぜか分からないけれど私にとって惹かれる一冊。その一冊ずつの積み重ねを経て、いまの私の思考が作

夏の琵琶湖があまりにも「夏」だった

夏の琵琶湖があまりにも「夏」だった。憂鬱なほどに暑い日、その暑さを乗り越えた先には、「外に出てよかったなぁ」と思える景色に出会う。 「あまりにも夏」という言葉には、例えば、果てしなく続く入道雲や、太陽に照らされてキラキラ光る水面、容赦なく差し込んでくる強い日差し、木陰にいるとたまにふっと吹く風、外で食べるアイス、ゆらゆらと風にそよぐ稲穂、くっきりと空との境界を見せる山の稜線、強い日差しに顔を向けるヒマワリ……。そんな景色が思い浮かぶ。 外に出たくない気持ちを奮い立たせて(

京都の夏を楽しむ │ 下鴨神社 みたらし祭

祇園祭の前祭が終わって、すっかり空気が梅雨から夏へと変わった。京都の夏は暑い。本当にうんざりするほど暑い。 けれど、そんな夏の京都にはたくさんの神事がある。神社やお寺が多いからか、いたるところでお祭りが行われているように思う。そのひとつが、下鴨神社のみたらし祭、通称足つけ神事だ。 うだるような暑さが少し和らいできた夕方に、糺の森を抜け下鴨神社へ向かう。少しずつ夕方から夜へと移りゆく空気を感じて、この移り変わりは「夏だなぁ」と思わせてくれる。 「足つけ神事」ともいわれてい

やっぱり京都の街が好きだと思わせてくれる日のこと │ 祇園祭 前祭 山鉾巡行

7月17日、今日は祇園祭 前祭の山鉾巡行の日である。京都の街がいちばん浮足立つ日といってもいいかもしれない。残念ながら夜行われる神幸祭には行けないので、今年は巡行に合わせて朝早くに四条に向かう。 祇園祭の交通規制の影響で私が乗っていたバスが四条まで行けず、だいぶ手前で降ろされた。改めて京都の人たちはそういった面倒事も受け入れてこの祇園祭の期間を乗り切っているのか、と感心する。 朝8時、山鉾巡行がスタートする少し前に四条を訪れる。巡行前の山鉾を間近で見られるからだ。昨日まで

ポルトガル ポルト1泊~女子ひとり旅日記~

リスボンで2日間を過ごし、早朝にポルトに移動する。日本からの移動3日、滞在3日の時間のない旅行なので、まだ暗いうちから動き出した。 まだ夜の気配しかない朝の5時台にホテルを出るのは、なかなかに緊張する時間だった。泊まったのがリスボンの中心地で、朝からバスや電車が動いていて良かった。そわそわしながらバックパックを抱えて出て、でも人がいなくても穏やかな街の様子が変わっていないことに安心した。 この滞在中に何度も通った中央の広場から、バスでSanta  Apolonia駅へ。こ

ポルトガル リスボン1日目~女子ひとり旅日記~

久しぶりのヨーロッパ。憧れのポルトガル。ドバイ乗り換えでほとんど1日かけてやってきたリスボンは、まだ少し寒く、でも街を歩くと汗が滲んでくる気候だった。 空港に着いたときにはエコノミークラスと時差ボケが効いて、ふらりとしていたけれど、着いてしまえば電車への乗り換えもそんなに難しくない。少し肩を強張らせて乗った地下鉄だったが、リスボンのそれは日本のものと同じように、程よく穏やかな空気が流れていた。 目的地のBaixa Chiado駅に着く。地下から長いエスカレーターで登りきる

たんぽぽの綿毛が飛ぶように

 深夜、居間に一人でテレビを観ていると、祖母が入ってきた。 「親方は? ねぇ、親方は?」  祖母の口から親方なんて聞いたことがなかった。思い当たる人もいない。何のことを言っているのかわからない。  こんなとき、どうすればいいのだろうか。  返答に窮する間に、祖母の注意は切り替わる。少しバランスの悪い歩き方で、暗い廊下を歩き、玄関の方へ向かっていった。   「親方はここにいないよ」  慌てて祖父母の寝室へ連れて行く。  深夜に居間にいると、しばしばこのようなやりとりをしな

【エッセイ】「日常」を楽しんでいこう

 「わー!ブルーインパルス?!」  大きなジェット音と、見上げた青空に3本並んで描かれたまっすぐな飛行機雲。思わず声を上げた私に、同じ職場の人達が笑った。  去年の秋、東松島市のとある工事現場でのこと。  「シノブさん、北海道だもね。ブルーインパルス見るの初めてか?」  「子供の頃に一度だけ、見たことあります。札幌で。」  現在は宮城県で暮らしているが、私の出身は北海道である。  幼い頃、札幌の丘珠空港にブルーインパルスが来るとのことで、家族で見に行った。初めて間近で聞く飛行

春の京都の片隅を歩く。桜の行方を追いかけ彷徨う日には

4月1日。新生活にドキドキしたり、そうでなくてもなんとなく背筋がピンとしたり。フリーランスで特に環境に変わりはない私ですら、「新しい区切りだな」と思えるこの時期が好き。4月1日、桜の開花も進みつつあり、そして京都の天気予報は大きな晴れマーク。いいスタートを切るためにも、始まりにふさわしいこの日を、桜巡りDayに充てることとした。 気づいたら、1日で10キロ近く歩いていた。歩こうと思って歩いたわけではなく、桜を追い求めていたら、歩いていたのだ。バスは混雑していてあまり乗る気に

ポルトで「世界一うつくしい書店」を訪れて

ポルトガルを訪れて3日目、ポルトという街にやってきました。どこに行こうか調べているとき、真っ先に目に入った言葉がありました。「世界一美しいと言われる書店」。 リスボンからポルトに向かう特急に揺られながら、急いでチケットを予約しました。 その美しさに魅了され、ハリーポッターの作者もその執筆中に通い詰めたそうです。だからハリポタファンからの人気も高く、並ぶ覚悟でチケットを買う必要があると言います。 公式サイトから、日付と時間を選びます。30分ずつ区切られた時間から、12時を