【エッセイ】「日常」を楽しんでいこう
「わー!ブルーインパルス?!」
大きなジェット音と、見上げた青空に3本並んで描かれたまっすぐな飛行機雲。思わず声を上げた私に、同じ職場の人達が笑った。
去年の秋、東松島市のとある工事現場でのこと。
「シノブさん、北海道だもね。ブルーインパルス見るの初めてか?」
「子供の頃に一度だけ、見たことあります。札幌で。」
現在は宮城県で暮らしているが、私の出身は北海道である。
幼い頃、札幌の丘珠空港にブルーインパルスが来るとのことで、家族で見に行った。初めて間近で聞く飛行機のジェット音に驚き、空に描かれてゆく整然とした飛行機雲に歓声を上げながら空を見上げたのをうっすらと覚えている。
けれど、自分の中でブルーインパルスが特別な存在になったのは、宮城県で生まれ育った夫と出会ってからだった気がする。
華麗なアクロバット飛行で知られる航空自衛隊の専門チーム「ブルーインパルス」は、宮城県東松島市にある松島基地を拠点としている。
「そっかぁ。北海道にも行ってたんだな。」
同僚のその言葉は、どこか少し嬉しそうだった。
「ここでは、いっつもだがら。」
「んだ。毎日飛んでっから。」
すぐ近くで作業をしていた地元業者の方々が、笑顔で私に言う。
その笑顔に、ブルーインパルスが地元の方々から愛されていることをあらためて実感した。
ウェブマガジン「ほんのひととき」のnoteに服部夏生さんが書かれていたエッセイを読みながら、私は半年ほど前の東松島でのそんなやりとりを思い出していた。
「ここでは、いっつもだがら。」
「んだ。毎日飛んでっから。」
あの日、工事現場で空を見上げる私を見て嬉しそうにそう教えてくれた人達は、そんな「いっつも」「毎日」が突然失われるという経験をした人達でもある。
日常は、尊い。
心から、そう思う。
日曜日、夫と二人で楽天モバイルパーク宮城に行ってきた。
東北楽天ゴールデンイーグルス 対 埼玉西武ライオンズ。開幕三連戦の最終日。
今シーズン、東北楽天ゴールデンイーグルスは球団創設20周年を迎えた。
試合開始前、球場の大型ビジョンには、球団創設からこれまでの20年間の歩みを振り返る映像が流れた。
その映像を見る夫の目は潤んでいた。
夫は、宮城県石巻市出身である。
イーグルスはここまで二連敗。投手陣は力投するものの打線になかなか火が付かない状態が続いていたのだが、この日は延長11回サヨナラ勝ち。
今江新監督の初勝利という嬉しい瞬間に立ち会うことも出来た。
北海道で生まれ育ちファイターズが北海道に来てからこれまでずっと応援してきた私は、宮城に移住した今も変わらず北海道日本ハムファイターズのファンである。
とはいえ、やはりイーグルスもまた特別な存在。宮城で暮らすようになり身近な存在になったからというのもあるが、球団設立当初のいきさつもあって、推しとはまた別に以前から応援していたチームでもあった。加えて駒大苫小牧高校出身の田中将大投手が入団してからは、まるで息子の就職先のような気持ちで応援してきたチームでもある。
ちなみにファイターズが北海道に来るまで、私はライオンズのファンだった。高校野球で好きだったPLの清原選手が入団したのを機に見るようになったパ・リーグの試合はワクワクの連続だった。秋山、清原、デストラーデのAKD砲がアーチを描き、現在はGMを務めている渡辺久信投手がトレンディエースと呼ばれていた時代。
結局、私はずっと野球が好きなんだろう。
いや、野球だけじゃない。
全力で頑張ってる人を応援するのが、好きなんだと思う。
好きなものがあるのは、幸せだ。
さぁ楽しんでいこう。