マガジンのカバー画像

好きなもの

17
運営しているクリエイター

記事一覧

月夜のドレス

月夜のドレス

私はかつて、大量生産型の安い服を買い漁っていた。
買ったばかりのときはそれを着た。ところが衣替えでしまい込んで、また季節が巡ってその服に再会したとき、元々好きで買ったものでもなく私には似合ってないしで、ただの古くさい服になっていた。
それから、数年タンスの肥やしにして、そっとサヨナラするのが常だった。

以前、下記のような記事を書いた。
私に、ものをよく吟味して、気に入った世界にひとつしかない素敵

もっとみる
遊牧な方から教わった、自分の大切にするものを主軸にする働き方

遊牧な方から教わった、自分の大切にするものを主軸にする働き方

今月の上旬、私に一枚のはがきが届いた。

私の大好きなお店の方からのはがきで、内容は、コロナ禍で移動が難しくなって、お店を閉店するというものだった。
私は残念だと思ったけれど、この日が来るのはなんとなく分かっていた気がする。

このお店の店主さん(お名前を知らないので、以下、牧子(仮名)さんとする)は、自宅でも洋服や、雑貨を扱うお店をしているのだが、12年前に私の実家のある九州でも港町の旧いビルの

もっとみる
雨とトトロ

雨とトトロ

私は、シトシトと降る雨が好きだ。雨が好きなのは、小さい頃からだ。

何故雨が好きなのかという理由を探ってみると、どうも小さい頃から宮崎駿監督の『となりのトトロ』を観て育ったことにあるのではないかと思う。
本作で描かれる雨は、大変印象的だ。
梅雨時の灌漑期の田んぼに降り注ぐ恵みの雨、繁忙期の農家の人々の雨の日の束の間の休息、嫌な子だと思っていたとなりの子の優しさに気付いた瞬間、そして何よりも父親を迎

もっとみる
徒然草 ポンコツ車

徒然草 ポンコツ車

昨日は、寒気が流れこんできて、雪が降るとのことだったが、そこまで寒くはなかった。

しかし、時折突風が吹いた。

私は、どうしても通勤と日々の買い物に必要だからと、身の丈に合った車を何年か前に購入した。

この車は、自動的に何かしてくれる機能が一切ついていない車であった。例えば、サイドミラーの開閉も手動、温度調整も手動で、便利機能が一切ない。しかし、そのお陰か、全く故障や不具合を起こしたことがない

もっとみる

有機野菜を使った無添加のムソーさんのおせち。地味な色だけれど、本当に美味しい。

白味噌と、黒豆は、農家さんから自然栽培の材料を分けて頂いて、自分で仕込んだもの。

どれも素材がいいから、本当にいい味を出してくれる。

きちんとご飯が美味しいって分かって、食べることができて幸せ。

密を避けるため、早めに初詣?に行った。氏神様に今年のお礼をした。

そしたらお社に、昨年初めて会ったミーミーちゃん(猫の名前)が今年も元気にいた。

元気かなぁ、ってしょっちゅう気になってたから、会えて嬉しい。

明るいニュースのない毎日だけれど、たまにこんなことがあると嬉しい。

昔、おじいちゃんに連れられて食べていた、F県M市にある鼓家さんの「鎮国饅頭」。

白餡と、ニッキの匂いのするザラメが入った香ばしい皮の、私の最も好きなお饅頭のひとつ。

小さなときに好きだったものが、そのままの味で残っているのは嬉しいし、これからも残っていて欲しい。ありがとう。

F県F市にある「naturalまんぷくや」さんの黒ゴマおはぎ。

主に自然栽培とか有機の材料を使われているので、ポストハーベストの心配もなく安心して食べられます。

自然に存在するものだけで、こんなに柔らかで美味しいものを作れるのは、凄い。職人さん、多くの農家さんに感謝です。

幼児とほうれん草とエビ

幼児とほうれん草とエビ

幼児期は、団地で育った。

その団地は当時、その場所といえばの産業の会社が所有する社宅が立ち並んでいた。

当初住んでいたところは、とても古く、部屋が小さく、冬は雪が降り込むし、シャワーもないし、トイレは和式だった。妹が産まれて、私が幼稚園に入園する頃に手狭になったので、そこからすぐ近所の広い社宅に引っ越し、それから間もなく私にとって実家となる家に越した。

団地の近くには市場や商店街が立ち並んで

もっとみる
旅立ちの朝

旅立ちの朝

桜は好きだ。けれど、春は新しいことが始まるので、私は憂鬱になることが多い。

滋賀県大津市仰木の里に、数年住んでいた。桜の花を独占しているかのように、窓から花見ができた。その地区は、比叡おろしという風が吹き、とても冷たく寒かった。でも、それに堪え忍び生き抜く木々や花は、四季によって姿を変え、息を飲むほど美しかった。

私が最後にその桜が満開になったのを観たのは、引っ越しの当日だった。優しく温かい催

もっとみる
受け継がれる祈り

受け継がれる祈り

私は約6年間、滋賀県に住んでいた。

何故か長浜市の高月町が好きで、壁にぶつかるようなことがあると度々この町を訪れた。町の中に農業用水になるものと思われる水路が走っており、いつ行っても綺麗な水が流れている。

滋賀県の人々は、ずっと昔から水と共に生き、自然の中に神を見出だしているように思う。

高月町の渡岸寺に安置されている十一面観音像は、天平時代(詳細は不明)に疫病が蔓延した際、終息を祈念して一

もっとみる
Love Letter

Love Letter

最近、テレビが観れない。

電波障害なのか、時間帯によってなぜか真っ暗になって、観れない。テレビが好きな訳ではないが、秋は夜が長いし、何だか手持ちぶさたになるので、テレビをつけていたくなる。それで、仕方がないから、図書館で借りたDVDを観ることにする。

葉が枯れ落ちる季節だからだろうか、秋から冬にかけて大切な人たちを失ったからだろうか、今観たくなるのは、自身の過去に向かわせてくれる映画である。

もっとみる

今日は週1回、図書館の日。

図書館の警備員さんが、和裁やってるのかい?と、声を掛けてくれた。まさか警備員さんからそんな言葉を掛けられるとは想像してなくて、何だか不思議で後から思い出し笑いをしてしまった。

ちょっとだけ顔見知りになって、ふいに声を掛けられるのは、とっても楽しい。

今日は一気に冷え込んできた。

こんな日は、コートを着て寒そうに背を曲げて畑を歩く、宮澤賢治の姿を思い浮かべる。

賢治の目指した、身近な人たちにそっと邪魔することなく寄り添える生き方について考える。たとえ、経済成長と生産性を目指す社会の中で、木偶の坊と呼ばれても逞しく生きたい。