河出書房新社/ウラジーミル・ソローキン/松下隆志=訳『テルリア』 舞台は21世紀半ばのロシア、ヨーロッパ。幅を利かせる正教共産主義者、庶民に混ざる異形の者。人々の頭に打ち込まれるテルルの釘。断片的に綴られる近未来世界はいずれも異なる文体で表現されており、異様な群像劇を成している。
『ブロの道』『氷』『23000』を並べると実に壮観。これがやりたかった。ウラジーミル・ソローキン作品ではSF色が濃くて、エンターテイメント性に比重を置いた作風だ。それでいて3作品とも軸となる文体が異なり、視点転換に群像劇と得意の実験的手法が存分に散りばめられている出色の作品群。