ソローキン『親衛隊士の日』読んでみたで
小泉悠さんが触れていたウラジーミル・ソローキンの『親衛隊士の日』を読んでみたのだ。
ソローキンは旧ソ連時代からアンダーグラウンドな作家として知られており、芸術的というか難解な作風で知られていたが、2000年代からは現代的な作品も出すようになった。
この作品もわりと読みやすい部類に入るのだろう。
近未来のロシアでは帝政が復活し、主人公は皇帝の親衛隊幹部として、やんちゃな日々を送っている。雷帝イヴァン4世時代のオプリーチニキっぽさ丸出しなのである。
近未来なのでハイテクなガジェットが所々に登場するのだが、やっていることは非常に野蛮で下品でホモソーシャルだ。親衛隊員は独裁主義の尖兵として大活躍しているというわけである。
もちろんこれは現代ロシアにおける専制を揶揄しているのである。西側諸国に対しては居丈高だが、中国には弱腰なところが可愛らしい。
この小説を特異なものにしているのが独特な文体である。どこまでがオリジナルでどこからが翻訳によるものなのかはわからないが、この邦訳は大成功ではなかろうか。内容が残忍なだけに、惨たらしさを増幅するこの文体を不快に感じる人もいるかもしれない。
本作がどれほど現代ロシアの感性を反映しているのか不明だが、分かった気になるにはもってこいという感じだった。
そういうことを抜きにしても面白い小説であった。
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