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たおやか日記

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恋人との健やかな日々を紡いでいきます。 SNSをやっていない人なので、記念日にまとめてお披露目しています。 「彼氏・彼女」ではなく「恋人」という言葉にこだわっていると話したら…
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#彼氏

きみと湯の町

きみと湯の町

「まだふわふわしてるよ〜誘ってくれてありがとね」

いつになく上機嫌な君は、揺れる船の小さなベットの中でむにゃむにゃ呟く。

1泊2日の弾丸旅行で、3杯のりゅうきゅう丼と4種類もの温泉を容易くクリアした君。
すごいじゃん。別府市民もびっくりだネ!

お布団の中で、にっこにこの君を見て、内心ホッとした。

だって君は「初対面の人は月に1人まで」なんてマイルールを持っている超絶人見知り屋さんなんだもん

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愛を捧げよ

愛を捧げよ

「やっと気づいたの?まったくもう…」

1年と8ヶ月。
この愚かな単位変換が無価値だと理解するまで、
こんなに時間がかかってしまった。

遅すぎる宣誓に、恋人は呆れた顔で笑ってくれた。
ごめん、遅くなって。

私の悪い癖。
不安になると、すぐに他の単位に換算してしまう。
「返信速度」なんかの目に見える単位には、何の意味も無いって言うのに。

好きな人からの愛情を、純度100%そのままに受け取ること

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まんまる土鍋を抱きしめて

まんまる土鍋を抱きしめて

気づいたら24歳になっていた。

人生ではじめて1人で誕生日を過ごした。
ファッションショーの準備に追われすぎて、恋人に
「絶対当日お祝いしないで」なんて、我儘なお願いまでして。

いつも通り、昨日の残った焼きそばを食べて、
お風呂に入って、ドレスにたくさんの装飾を付けて
気づいたらもう夜中になっていた。

友達からもお祝いメッセージを貰ったはずなのに、
もう何日も経とうとしているっていうのに、

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おんまゆなおれたち

おんまゆなおれたち

そうか。もう10年も経つんだ。
片時も離れず、365日24時間ずーっと一緒。

眉毛にかかりそうになるたびに、チョキチョキと
お風呂場や、教室や、廊下で、いつも短く揃えて。

親友に、先輩に、お父さんとお母さんに。

大切な日の前日は、大好きな人達に切ってもらうことが、当時の私にとって何よりも重要な儀式で。

コンクールの前には、オン眉を願掛けにした。
指4本がすっぽり収まるくらい短くぱっつんと。

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ユートピア貯金

ユートピア貯金

ささやかな芝生でドーナツ片手にピクニックして、
美術館デート終わってから感想戦で盛り上がって、
くるりの音博で一緒に泣きながら羊文学を聞いて、
深夜に鍋や、餃子や、ハンバーグを頬張って。

ずっと夢見ていた平穏で穏やかな生活が、ここには
あった。

この一年半、どんなに忙しくても、悔しくても、
人生を手放したくなったとしても、君が隣にいて、
ただそれだけで、私は一瞬で穏やかになれた。

そんな君と

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君と撚り糸

君と撚り糸

いつだって、2人の未来に煌めきをもたせるための
努力を惜しまないその姿勢に、私は何度も感動して恋をする。

ぜんぶ、君のおかげだ。

❄︎ ❄︎ ❄︎

東京の会社から内定が出た。

そこで働くかどうか、まだ決めきれていないけれど
とりあえずニートになることは防げそうだ。

そっと心を撫で下ろした反面、急に“遠距離”なんて
暗雲が立ち込めてくる。

しかも、終わりのない無期限の遠距離。

「彼氏フ

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なにもあきらめたくない、赤い糸

なにもあきらめたくない、赤い糸

私の夢も、君との未来も、どっちも諦めない。
そんなのって、やっぱり夢物語なのでしょうか。

いや、そんなことない。そんなことないはずだ。

❄︎ ❄︎ ❄︎

ちょっと良いなと思っていた会社から連絡が来た。
2次面接スキップして最終面接に来てくださいって。

オーダーメイド制で、大量生産・大量廃棄を乗り越えることを、1番の目標としている会社。

まさに、私が大学時代に研究していたことや、
今、こう

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これさえあれば

これさえあれば

今、私たちに一番の試練が押し寄せている。

何度も無理だと押しつぶされそうになるけれど、
そのたびに優しく光る薬指がそっと力をくれる。

大丈夫。うちらなら、絶対やれるよって。

❄︎ ❄︎ ❄︎

ファッションショーまで、残り2週間。

人類学のエッセンスを、最大限ファッションに
落とし込んだブランドをお披露目する。

誰もが、着るだけで他者の存在を意識できる服があれば、この世界はもっと温かくな

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言葉の奥行き

言葉の奥行き

「このエッセイ、ゆきっぽくて非常に良いね」

去年と同じ場所、同じ時間、同じ服装の君に、
1年間かけて綴ったラブレターを本にして渡した。

時間をかけて、丁寧に読み進める君の横顔が、
この世界の何よりも美しいと思う。

初デートに感じた忘れられない胸の高鳴り、
中々会えずに淋しくなってしまったあの夜、
離れていてもそばにいると実感した日のこと。

木漏れ日の中で、共に振り返る思い出達は、
1人で綴

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踊り場

踊り場

結婚に大きな願望を抱いたことは無かった。

好きな人と末永く一緒にいられたら、それだけでもう十分じゃないか。

けれど、周りの子達は、最近急に具体的な話をするようになって。

今の彼氏と2年後に結婚する約束をしているとか、
もうすぐ同棲を始める予定だとか。

ついこの間まで制服を着ていた女の子たちが、次々に結婚へ向かっているという現実に、すごく焦りを感じてしまう。

そこまで興味もなかったはずの”

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君が初恋じゃなくて死ぬほど良かった

君が初恋じゃなくて死ぬほど良かった

もっと昔の君と出会えていたら…

お揃いの制服で2人乗りする高校生を見て、ふいにパラレルワールドの私達へ思いを馳せる。

バド部の君と、吹部の私。

朝は一緒に登校して、廊下で手を振って、帰りは公園でお喋りした後、家まで送ってくれる。

みたいな。

君は優しいから、演奏会は毎回必ず顔を出してくれるはず。

「泣いてないもん」
なんて言いながら、きっとボロボロ泣いて定期演奏会の感想を教えてくれるん

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溢れんばかりの春を揺らそう

溢れんばかりの春を揺らそう

「あれ、なんでいるの!え!どうしよ!」

今日に限ってJRではなく、御堂筋だった私。
自転車を置いた君にばったり会った。

予定よりも早く会えてラッキー!なんて思っていたのに、なんだか君はオロオロ落ち着かない…

大丈夫??なんかあった??

「実は、会った時にお花渡したくて…買いに行く途中で…間に合わなくてごめんね」

なんてこった!!!

私が1番好きだと言ったお花を覚えていてくれて、バレンタ

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不確定な未来の内側で

不確定な未来の内側で

その微笑ましい君の横顔を見るたびに、あぁ、
いつかちゃんと言わないとって思ってしまう。

悪いことをした訳じゃないのに、騙しているみたいでモヤモヤする。

最寄りのバス停の前には、小さな保育園がある。

バスが来るまでの間、ガラス越しに見える小さな生き物達を眺めては、勝手にアフレコをするのが私達の日課だ。

上手に靴が履けなくて泣いている子や、それを
手伝ってあげる優しい子。

そして、彼らを愛お

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未来永劫君は本命

未来永劫君は本命

こんなの、ただの儀式だと思ってた。

“私達ちゃんと友達だよね?”

そんな確認をするために、チョコやクッキーを、夜中に小さくラッピングしてたっけ。

50個作って、似たような物体を50個貰う儀式。
溶かして、固めて、キラキラまぶしたお菓子達。

私は、どこの誰が作ったのか分からないモノを
食べれない人間だったので、名前の書いていない
チョコ達は、全部結局ゴミ箱に捨てていた。

こんな等価交換なん

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