溢れんばかりの春を揺らそう
「あれ、なんでいるの!え!どうしよ!」
今日に限ってJRではなく、御堂筋だった私。
自転車を置いた君にばったり会った。
予定よりも早く会えてラッキー!なんて思っていたのに、なんだか君はオロオロ落ち着かない…
大丈夫??なんかあった??
「実は、会った時にお花渡したくて…買いに行く途中で…間に合わなくてごめんね」
なんてこった!!!
私が1番好きだと言ったお花を覚えていてくれて、バレンタインを渡したその日から、計画を立ててくれて。
遅くまでやっているお花屋さんの動線確保まで。
なのに、私の気まぐれのせいで、全てを台無しにしてしまった。
だけどね、計画を考えてくれたその気持ちだけで、もう十分幸せなんだよ。
もう、花言葉まで調べてくれていたなんて。
そういうところ、大好きなんだよ!!
君には申し訳ないけれど、内心ちょっとだけ、
この形で良かったかも、なんて意地悪なことを思ってしまった自分がいる。
だって、こんなに一生懸命選んでくれている横顔を、直接見ることが出来たのだから。
恋人の選んでくれたミモザは、1番控えめで、慎ましく、それでいてフリフリと沢山のお花を仲良く揺らしていた。
誰かが言う。美しさとは、慎ましさだと。
薔薇のような派手さも、盛大な花束も必要ない。
この手にすっぽりと収まる可憐なミモザが、君が懸命に選んでくれたこの花束が、世界中の何よりも美しいと思う。
帰るなり、一目散にドライフラワーにした。
椅子に座るたび、ふんわりと草花の香りがする。
君に抱きしめられているみたいで、自然と笑みが溢れてしまう。
離れていてもそばにいるって、きっとこういうことだ。
君と会えない日々は、とにかく寂しいけれど、
この愛おしいミモザが揺れるたびに、ちゃんと
大丈夫だって思えるの。
ねぇ、人生で一番幸せなホワイトデーだったよ。
サプライズ、大成功だね。
やっぱり君は、私を喜ばせる天才だ。