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愛を捧げよ

「やっと気づいたの?まったくもう…」

1年と8ヶ月。
この愚かな単位変換が無価値だと理解するまで、
こんなに時間がかかってしまった。

遅すぎる宣誓に、恋人は呆れた顔で笑ってくれた。
ごめん、遅くなって。

私の悪い癖。
不安になると、すぐに他の単位に換算してしまう。
「返信速度」なんかの目に見える単位には、何の意味も無いって言うのに。

好きな人からの愛情を、純度100%そのままに受け取ることが、どんなに難しいことなのか。

そして、この単位変換を乗り越えることが、本当の愛ってやつなのかもしれない。

❄︎ ❄︎ ❄︎

年明け、東京。部屋探し。

高圧的な不動産に怯えて、生理前と、ファッションショーの締め切り前も相まって、私の情緒は過去一不安定だった。

こんな日こそ、君の声を聞きたくてたまらなかったのに、既読にならないし、久しぶりの帰省を邪魔する訳にはいかなくて。

既読にならないっていうのは、どういうこと?
事故?風邪?それとも…
君はあまりにも優しすぎる節があるから。
あぁ、どうしよう、もう、無理かもしれない。

深夜2時。
狭くて暗いホテルの片隅で、愚かだと分かっていながら、知らない人とサクッと話せるキモいアプリを入れてみたけれど、この不安は収まるどころか、逆に、むしろ、懺悔の気持ちが募るばかり。

次の日に、何も変わらない君から、たっぷり構ってもらって、私だって君と同じ愛情で溢れているはずなのに、昨晩の罪が引っかかって、心がザワザワする。

ごめんねとだけ伝えて、何が?と言われて、この状況を俯瞰して、この阿呆で愚かな自分を殴り殺したくなる。

結局、君にはどうしても嘘をつけなくて、正直に全て打ち明けた。

「連絡怠った俺が悪いから、何も言えないよ」
幻滅されて、嫌われて、怒られる思ったのに。
やっぱり優しすぎる君は、ポツリと一言だけ呟いた。

忙しい中でも二人の時間を作ってくれること。
デート前は、入念に下調べをしてくれること。
私のことを、いつも大切に想っていてくれること。
私が忘れてしまった昔の思い出や発言を、明確に覚えていてくれること。

何よりも、言葉を大切にしていて、時間をかけて、丁寧に返してくれること。

いつだって新しい角度から、笑わせてくれること。

こういう恋人からの純粋無垢な愛情を「返信速度」なんかの安易に測ろうとするなんて、冷静に考えれば阿呆らしいにも程がある。

だから、もう二度と君の愛情疑わない。
意味のない秤にかけない。

好きなのだから、愛しているのだから、愛されているのだから、何があっても大丈夫だと信じて、心を強くする。

恋人の可愛い横顔を思い浮かべながら、好きなことをして、そっと待つ。

見えても、見えなくても、声が聞こえても、聞こえなくても、考えが分かっても、分からなくても。

私は、捧げる。君に。愛を。
測って、疑って、ほんとうにごめんね。
愛してるよ。いつまでも。

今年のおみくじは久しぶりの大吉。
恋愛は「愛を捧げよ」って書いてあった。
ん?もうちゃんと捧げているが??なんて思ったけど、
やはり、かなり当たっているのかもしれない。
捧げるんだ。君に。

東京のファミレスで、泣きながら綴った本音。
怖かったね。もう、大丈夫だよ。強くなったよ。

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