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図書館

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図書館全般についての記事をまとめています。
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図書館のお仕事紹介:イベント企画

図書館のお仕事紹介:イベント企画

図書館では、貸出などの通常業務の他に、定期的にイベントを開催することがあります。

たとえば「身近な材料で七夕飾りやクリスマスリースを作ろう!」といったワークショップ系や、講師を招いての講演会、映画の上映会、こども向けの紙芝居やおはなし会などです。

地味なことが多い図書館員の仕事のなかでは、イベント企画というのはわりと楽しげな業務ではありますが、やはり外部とのやり取りになるため、気を遣うこともい

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読書量を冊数で量るのは無理があります

読書量を冊数で量るのは無理があります

図書館で働いていると、利用者の読書量が気になります。貸出冊数の統計を出したり、「月に何冊くらい本を読みますか」などのアンケート調査をしたこともあります。

ただ最近「読書量を冊数でカウントするのは無理があるのではないか」と思うようになりました。

1冊あたりの情報量が本によってまったく違うからです。

「一か月でピーターラビットの絵本全24冊読んじゃった」という人と「ヘーゲル著『精神現象学』上巻が

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図書館のお仕事紹介:発注と検収

図書館のお仕事紹介:発注と検収

久しぶりにこのシリーズです。
今回は図書館に入れる本の「発注」、届いた本をチェックする「検収」をご紹介します。

このふたつはお金が絡むのと外部の人(書店さん)とのやりとりになるので、ちょっと緊張する仕事です。
※実際は発注と検収は担当者が別人であることも多いのですが、ひとつながりの仕事なのでここでは一緒に取り上げました。

発注仕事の流れはこんな感じです。
・選書担当から上司の決裁を経て、発注が

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文庫本だけどハードカバー

文庫本だけどハードカバー

図書館に勤めていても「やっぱり文庫本ていいよね」と思うことが多いです。
利用者さんからの問い合わせ対応でも、お探しのタイトルがハードカバーの全集しか所蔵がなかったりすると「うーん…文庫版はないですか?」と言われることがあります。利用者アンケートで「もっと文庫を増やしてほしい」というのもありました。

なにしろ軽くて持ち運びに便利です。ポケットに入れられ、ページ数によってはスマホより軽いですし、ちょ

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司書の雇い止めで話題になった、狭山市立中央図書館に行ってみました

司書の雇い止めで話題になった、狭山市立中央図書館に行ってみました

先日、用事があって埼玉県にある狭山市駅周辺で時間を潰さなければならず、近くの狭山市立中央図書館に行ってみました。

ここは、2023年に図書館司書の雇い止め問題で話題になったところです。

我々図書館業界人のあいだでも(悪い意味で)話題になっていました。
どうせならもっと素敵なことで話題になっている図書館に行きたかったのですが、仕方がありません。

図書館に一歩入って感じたのが「空いている」という

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図書館の電子化はなぜ進まないのか?

図書館の電子化はなぜ進まないのか?

「もうすぐ紙の本は滅びる、これからは図書館も電子の時代!」みたいなことは、思えば何十年も前から言われていた気がします。

何十年も経った今、「そうはなってないな」というのが正直な感想です。
たしかにコロナ禍を機に、私の勤め先でも来館せずに使えるサービスを増やそうという動きはありました。実際に電子書籍・電子ジャーナルも拡充していますし、利用者向けの電子資料活用講習会にも力を入れています。

ただ、図

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図書館におけるブルシット・ワーカーの事例

図書館におけるブルシット・ワーカーの事例

図書館に、こんな人がいます。
仮にXさんとします。

Xさんは職員として図書館に出勤しているので、傍目には「司書さん」に見えるかもしれませんが、まったく司書ではありません。

人事異動で図書館に配属された一般職員です。

貸出・返却やレファレンスなどの利用者対応、配架や書架整理、本の装備や分類・書誌データ作成、展示の企画、壊れた本の修理など、世間でイメージする図書館司書の仕事はいっさいやっていませ

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図書館リサイクル本の転売について

図書館リサイクル本の転売について

私の勤めている図書館では、定期的に除籍本を利用者に無料配布しています。

対象となるのは置き場のなくなった複本や、古くなって資料価値がなくなったもの(ソフトウェアのマニュアル本とか)です。

ただこの無料配布本、「もしかして転売されているのでは…?」という疑惑を感じることがあります。
とくに事前予告したわけでもないのに初日からごっそりほぼ全部なくなっていたり、上下巻の下巻だけとか、スーツケースでな

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本の書誌データをヒントに、人間の戸籍を「個籍」にしてみました

本の書誌データをヒントに、人間の戸籍を「個籍」にしてみました

じつは本にも「親子関係」があるものが存在しますたとえばこんな本です。

この場合『岩波講座 世界歴史』が「親」です。
書誌データはこのようになります(依拠する目録規則によって記述方法は異なりますので一例です)。

NII書誌ID(NCID):BC10314546
出版国コード:ja タイトル言語コード:jpn 本文言語コード:und
岩波講座世界歴史
荒川正晴 [ほか] 編集委員
岩波書店, 20

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検索の限界

検索の限界

職業柄、学生の利用者さんと接する機会が多いです。

最初は「いやあイマドキの若者なんだし、みんなネット検索なんて慣れてるだろうから、教えることなんて何もないんじゃないの」と思っていました。

ところがだんだん「若い世代の検索能力というのは、こちらが予想したほど高くないらしい」と思い始めます。

そして最近思うのは「そもそも検索という行為は、ある程度人生経験がある人のほうが有利なのではないか」という

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図書館のお仕事紹介:所在変更

図書館のお仕事紹介:所在変更

所在変更とは、つまり本のお引越しです。

具体的な作業としては、現物(本)の移動、住所(配架場所や請求記号といった所蔵データ)の変更、必要に応じて背ラベルなどの装備もお召し替え、となります。

所在変更の理由理由はいろいろあり得ますが、私の勤務先の場合、まずは配架スペースの確保が目的です。
なにしろすでにある本で棚がいっぱいなところへ新着本がどんどん来るわけですから、所在変更しないことには新しい本

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「20分で3品」司書

「20分で3品」司書

よく料理で、「揚げ○○の××あんかけ」みたいな手のかかるレシピに挑戦したり、「フォアグラのトリュフソース添え」みたいな高級食材を使いたがる人がいます。

でも家庭で求められるのはそんなことではなく、「冷蔵庫にある賞味期限が迫っている食材を組み合わせて20分で3品作れ、しかもちゃんとおいしい」ことだったりしますね。おなかをすかせた家族を待たせないことのほうがたいせつです。

図書館でも同じようなこと

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小口研磨という本への暴力

小口研磨という本への暴力

見出し画像を見ていただくと、縦方向に細かいスジが走っているのが見えますよね。
これが研磨された小口です。

書店で小口をキレイに見せる目的で行われるもののようですが、実はこれ、図書館としてはちょっと困るものでもあります。

小口研磨のデメリット資料の劣化を早める

そもそも、本にとって小口のヤケやシミというのは単なる経年変化であり、衛生上の問題もなく、カビや害虫、紙の酸化のようにただちに対処しなけ

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おなじ本?ちがう本?:図書館における「書誌の同定」というお仕事

おなじ本?ちがう本?:図書館における「書誌の同定」というお仕事

図書館では「これとこれは同じ本なのか」という判断を迫られる場面がけっこうあります。
「これとこれ」は本と本のこともありますが、多いのは書誌データと本、または書誌データと書誌データです。
いちばん関係あるのは目録担当者ですが、レファレンスや相互利用、選書、除籍などでも避けて通れません。この判断を誤ると、求める本と違う本を利用者に提供してしまったり、すでに所蔵していることに気づかず重複発注してしまった

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