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図書館のお仕事紹介:所在変更

所在変更とは、つまり本のお引越しです。

具体的な作業としては、現物(本)の移動、住所(配架場所や請求記号といった所蔵データ)の変更、必要に応じて背ラベルなどの装備もお召し替え、となります。

所在変更の理由

理由はいろいろあり得ますが、私の勤務先の場合、まずは配架スペースの確保が目的です。
なにしろすでにある本で棚がいっぱいなところへ新着本がどんどん来るわけですから、所在変更しないことには新しい本が入りません。

自転車操業状態なので「このあいだ保存書庫Aで除籍作業をして〇段ぶん棚が空いたから、開架書架から利用頻度の低いものを〇冊抽出して、入りきらない分は保存書庫Bに送って…」というパズルのような戦略が必要です。

大きな図書館で複数の分館・分室を持っているようなところでは、さらに大がかりな所在変更があると思います。

たいてい新着→新着本コーナー→各分類の開架書架→古くなって利用頻度が下がると閉架の保存書庫、というコースをたどることが多いです。
保存書庫送りになることを私の職場では「2軍落ち」と呼んだりしていますが、いったん2軍落ちしても、意外と利用が多くていちいち取りに行くのが不便、という声が上がり、また開架書架に復帰、という逆コースの所在変更もあります。

またそれとは別に「やっぱりこの本はこの棚にあるよりこっちのほうが活用されそう」という理由で所在変更することもありますね。

所在変更の後始末

本が移動されることで利用者さんが困る部分もあるようで、ときどき「以前この棚にあった本がないんですが、捨てられてしまったんですか?」という問い合わせがあります。
タイトルなどを覚えていてくだされば検索すれば済む話ですが、そういうのに限って「とにかくこの棚のこの辺にあった!」というのが記憶のすべて、だったりします。
そうなるとカウンター担当者から私に「ちょっと、このあいだ晴れるさんが所在変更した本、どこにやったっけ?」と回ってきます。
このあいだといっても半年前だったりするのでこちらも記憶のかなたで、所在変更データのファイルを検索しながら利用者さんにも記憶を掘り起こしてもらい、「以前というのはいつ頃ですか?…一年前…大きくて青っぽい表紙…」と一生懸命版元データベースの書影画像などを見て、ようやく探し出したこともありました。

本を「置き場所」で覚えている人は想像以上に多いようです。
いかにも問い合わせがありそうな本は先手を打って「○○シリーズは△△コーナーへ移動しました」などと掲示しておくこともありますが、きりがないですし、難しいところですね。

所在変更のやりがい

所在変更は地味なうえにまあまあ面倒な仕事ですが、本がぎゅうぎゅうに詰めこまれて取り出しにくかったような棚に適度なゆとりが出て見やすい状態になったり、それなりのやりがいもあります。

とくにそれまで日の目を見なかった本が、所在変更したことで利用されるようになったときはうれしいです。
図書館マニアでもない限り、館内を隈なく見て回る利用者というのはなかなかいないのです。たいていは興味のある棚しか見ないですし、まして閉架書庫の本を検索で見つけ出してくれるのは一握りですので、本が移動することによって存在に気づいてもらえることも多いのです。

人間でも、今までの部署でくすぶっていた人材が、新しい職場に移ったとたんイキイキと活躍し始めることがありますが、本も人も置き場所しだい、ということでしょうか。

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