本の書誌データをヒントに、人間の戸籍を「個籍」にしてみました
じつは本にも「親子関係」があるものが存在します
たとえばこんな本です。
この場合『岩波講座 世界歴史』が「親」です。
書誌データはこのようになります(依拠する目録規則によって記述方法は異なりますので一例です)。
NII書誌ID(NCID):BC10314546
出版国コード:ja タイトル言語コード:jpn 本文言語コード:und
岩波講座世界歴史
荒川正晴 [ほか] 編集委員
岩波書店, 2021.10-2023.11
タイトル別名 世界歴史 : 岩波講座
タイトル読み イワナミ コウザ セカイ レキシ
出版地:東京
ページ数/冊数:24冊
大きさ:22cm
分類 NDC8 : 209 NDC9 : 209
件名 BSH : 世界史
注記:その他の編集委員: 大黒俊二, 小川幸司, 木畑洋一, 冨谷至, 中野聡, 永原陽子, 林佳世子, 弘末雅士, 安村直己, 吉澤誠一郎
注記:子書誌あり
『岩波講座世界歴史』は全体のシリーズ名なので実際にそういう本があるわけではないのですが、概念上の親として書誌データが作成されます。
それを構成する全24巻が「子」になります。
「子」の書誌データはこんな感じ(第1巻です)。
NII書誌ID(NCID):BC10314557
ISBN:9784000114110
出版国コード:ja タイトル言語コード:jpn 本文言語コード:jpn
世界史とは何か
荒川正晴 [ほか] 編集委員
(岩波講座世界歴史 / 荒川正晴 [ほか] 編集委員, 1)
岩波書店, 2021.10
タイトル読み:セカイシ トワ ナニカ
出版地:東京
ページ数/冊数:xiv, 326p 大きさ:22cm
分類 NDC9 : 209 NDC10 : 209
件名 NDLSH : 世界史 BSH : 世界史
親書誌ID:BC10314546
発想としては『岩波講座世界歴史』という親に24冊の子どもがいて、それぞれ親データにリンクが形成されています。この24冊は同じ親にリンクされている「きょうだい」関係でもあるわけです(実際にそういう呼び方はあまりしませんが)。
この考え方を使って、人間の個籍をつくってみます
まず私(晴れる)のデータを作ります。
本のタイトルにあたるのは名前だけで、氏名は異名フィールドに記入されるのがポイントです。
両親のIDをそれぞれ親フィールドにリンクします。
さて、晴れるは「曇るさん」と結婚することになりました。
配偶者フィールドに曇るさんのIDをリンクします。
必要に応じて、異名フィールドに結婚相手の姓を追加します。
ポイントは、ここでどちらの姓を名乗るか決断する必要はないということです。実際は夫婦別姓でも、配偶者の姓に変えても、気分で両方使い分けてもかまいません。戸籍と違って筆頭者というものがないので、氏名はあくまで参考情報で、データベース上のアクセスポイントが増えるだけだからです。
離婚した場合は、配偶者リンクを削除します。婚姻の履歴を残すなら注記フィールドに記載するか、「無効な配偶者フィールド」のようなものを追加することになるかもしれません。
さて、二人のあいだに「小雨ちゃん」が誕生しました。
子リンクを作成します。
同時に小雨ちゃんの個籍も新規作成します。
個籍のメリット
「氏を同じくする者の集合」としての戸籍は、人間の実情を反映するうえで、あきらかに無理があります。
これは何もフェミニズムとか、家父長制がどうとかの思想的な問題だけではありません。
個人をベースに関係者をリンクでつなぐ個籍のほうが、データとして現実を正確に記述し全体像を把握するうえで圧倒的にわかりやすく検索しやすいのです。
たとえば結婚と離婚を繰り返し、何度も改姓して複数の相手と子どもをつくったりした人は、現行の戸籍ではものすごく煩雑なことになりますが、個籍なら注記とリンクを追加するだけで済みます。
相続人もリンク先を一括で抽出できますから、相続あるあるの「出生から死亡までの戸籍謄本を日本中の役所から集めて回る」苦労もいりません。
毒親やDV加害者から個籍情報を守るため、申請すれば先方のIDからのリンクをブロックする設定も可能になります。
本には「イエ」という概念がないので、書誌データのほうが合理的な記述方法が発達してきたのかもしれません。
人間の戸籍制度で大胆な改革がはたして実現できるのか、現状を考えるとどうも望みが薄そうです…。