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図書館のお仕事紹介:発注と検収

久しぶりにこのシリーズです。
今回は図書館に入れる本の「発注」、届いた本をチェックする「検収」をご紹介します。

このふたつはお金が絡むのと外部の人(書店さん)とのやりとりになるので、ちょっと緊張する仕事です。
※実際は発注と検収は担当者が別人であることも多いのですが、ひとつながりの仕事なのでここでは一緒に取り上げました。


発注

仕事の流れはこんな感じです。
・選書担当から上司の決裁を経て、発注が決定
・発注データを入力して、発注リストを出力
・書店さんに発注の連絡

発注データを作るのは重複発注を避ける効果もあり、また図書館システムで「発注中」と表示されることでカウンター担当者が利用者の問い合わせに対して「ああ、その本なら現在発注中なので近いうちに入りますよ」とご案内できます。

検収

発注した本が届いたら検収します。
・箱を開封
・発注リスト・納品書・請求書と照合しながら中身をチェック
・ブックトラックや仮置き棚に順番に並べる

トラブルいろいろと気を付けていること

発注と検収は何事もなければたいした仕事ではなく、ISBNの付いている一般的な新刊書ならバーコードをピッピッとやる機械的な作業で処理できます。ただ現実には何事かがあるもので、以下トラブルあるあるです。

未着

発注した本が待てど暮らせど届かないケースです。
未着の理由は「版元で刊行遅延もしくは中止」「品切れ」「輸送のトラブル」「単に書店さんが忘れていた」などです。
時間が経てば経つほど入手困難になる可能性があり、図書館担当者はこまめに未着をチェックして「先日発注した本が未着のようですが、どうなっていますでしょうか」と書店さんに憂鬱なメールを打たねばなりません。

とくに国内に在庫がない洋書を海外から取り寄せる場合、船便になるので時間がかかることが多く、国際情勢にも左右されます。コロナ禍では輸送の遅延が多発して苦労しました。

イベントで使うとか、こちらの都合で至急必要なものが届かないのもハラハラします。また図書館では年度で予算が区切られるため、発注した本が年度内に納品されないと決算上めんどうなことになります。年度末近くなると「〇月△日までに必ず納品できるでしょうか?」と書店さんに確認するのが風物詩になっています。

まちがった本が届く

めったにないですが、発注したものと違う本が届くことがあります。
私も「タイトルは同じだがまったく違う本」が届いた事例に遭遇しました(書店さんに連絡して交換してもらいました)。
本は「ISBNが同じでも版違い」という場合もあるので要注意です。

届いた本に問題

よくあるのは破損や落丁・乱丁です。
これも書店さんに連絡して交換してもらいます。
一度、古書で納品されたものを開いてみたら「全面にカラーインクで線引きされていた」ことがあります。古書は基本的に返品不可なのですが、この時はさすがにクレームを入れて交換してもらいました。

発注ミス

これは図書館側の問題です。
よくあるのは同じ本の重複発注です。書店さんのサービスで返品を受け付けてくれることもありますが、ダメな場合は「やってしまった…」となります(そうならないように発注時は念入りに重複をチェックしています)。
先に書いた「同じタイトルの違う本が届いた」時は、一瞬自分の発注ミスかと思って青ざめました。

まとめ

何事もなければたいした仕事ではないとは言いましたが、とくに洋書や古書の発注や検収には、やはり本の知識があり書誌データの読める人が任されていることが多いです。
また高価な本の横領とか、不正が発生する可能性もゼロではないので、すくなくとも私の職場では検収担当者は指定されていて、誰でもできることではありません。
他人様のお金で買っている以上、未払いの本の紛失はかなり怖いことで、それなりにプレッシャーもあります。

発注の時には納期を確認したり、一般に流通しない本を入手してくれる書店さんを探したり、見積価格を比較したりもします。

まあこうしたことも、選定から装備まで外部業者に委託して、勧められるままに決まりきった本だけを買い、洋書や古書や入手困難な本も探さなければラクになるでしょうし、実際そういう図書館もあるかもしれませんが、それではつまらなくなる一方でしょうし、発注や検収できめ細かな対応が求められる状況は、やはり必要なのかもしれません。


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