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言葉となかよくなりたい

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言葉ともっとなかよくなるために、言葉のいいところを探したり、意外な一面を見つけたり、時には嫌な部分を見てしまったり。言葉に関する思いや気づきをとりとめもなく書いていく試み。
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2019年6月の記事一覧

風の名づけ親

自然現象の中で一番好きなのは風だ。

肌を柔らかく撫でるそよ風も、風の又三郎に出てくる「どっどどどどうどどどうどどどう」のような、青いくるみを吹き飛ばす強い風も。

日本には風の名前だけでも150以上あって、今の季節に吹く強い風は「初夏の青葉を揺らして吹く風」という意味で「青嵐」というらしい。

これだけ風の名前が多いのは、もちろん農業をする上で天候を細かく分類する必要があったからだろうけど、最初

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砂漠の花

「砂漠には、強い風に吹かれて飛んできた草や花の種がいっぱい詰まってるそうです。だから何かのかげんで雨が降ると、その雨雲の下だけ、それは様々な植物が一斉に芽吹き花をつけるそうです。一見、味気ない日常生活の中にも、思いもよらぬ宝物が詰まっているものです」

脚本家の木皿泉の言葉だ。この人(正確には夫婦ユニットなのでこの人たち)は読む人の頭の中に、ぐわっとイメージを生む言葉の名手だなあと改めて思う。

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新しい息

ロードバイクがテーマの漫画で、主人公が、疲れて息が上がった友人に「そういう時は、は〜は〜と声に出して息を吐くといいですよ。吸うことより吐くことを意識すると楽になりますよ」とアドバイスするシーンがあった。

これって運動だけでなく、日常生活でも大事なことだな、と思った。

仕事でもプライベートでも、いつのまにか息を吸いすぎて苦しくなることはある。身体的にというより気持ち的に。頑張ろうとするとどうして

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論理的ということ

「論理的だね」とよく言われる。
あと「説明がわかりやすい」とも。

僕としては、感覚的でありたいと思っているし、実際に論理力を点数化するテストをしたら5点という酷い結果だったので、論理的と言われても嬉しくないし、本当はそうじゃないのにと思ってしまう。

論理的って、なんかつまんない人だねって言われた気になるし。

でも最近読んだ、野矢茂樹さんという哲学者の本を読んで、論理的であることが少し好きにな

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それしかないわけないでしょう

またしてもヨシタケシンスケさんの絵本の話。面白いんだからしょうがない。

「それしかないわけないでしょう」は、ある女の子が、当たり前・常識と思われてるものごとに対して「それしかないわけないでしょう!」と言いながら、思ってもみなかった可能性を見つけていく話だ。

例えば「はけなくなった長靴は捨てるしかない?」「植木鉢にしちゃえばいいじゃない!」

「かけっこが苦手だから一等賞はあきらめるしかない?」

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好きな詩があるということ

学生の時は国語の授業で習うので、心に残っている詩はいくつかあった。

三好達治の「土」、吉野弘の「I was born」「夕焼け」など。

でも大人になってからは詩に触れ合う機会も減り、子供の頃に習った詩に再会したとしても「懐かしいな」にとどまっていた。

小説はたくさん読むのに、詩を読む機会はほとんどなくなっていた。

そんな時、木皿泉脚本の「セクシーボイスアンドロボ」というドラマで、黒田三郎の

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小林秀雄に凹まされる

いやまあ凹まされるっていうか、そうだよなーと。どうしたもんかなーっと。

というのも小林秀雄のこんな文章を読んだから。

例えば 、諸君が野原を歩いていて一輪の美しい花の咲いているのを見たとする 。見ると 、それはすみれの花だと解る 。何だ 、すみれの花か 、と思った瞬間に 、諸君はもう花の形も色も見るのを止めるでしょう 〜(中略)〜すみれの花だと解るという事は 、花の姿や色の美しい感じを言葉で置

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会話と対話

対話の楽しさを知ってしまうと、会話ばかりの打ち合わせがとっても退屈に感じてしまう。

舌が肥えた、みたいに脳が肥えたって感じ。

まずいな。いやいいのか。

伝えきれないからこそ

思いのすべてを伝えることはできないし

ちゃんと伝わったかどうかを知る術もない。

言葉はいつも思いに足りないし、

特に家族に対しては照れや甘えで

そもそも素直な言葉が出てこない。

でももし伝えきれたら、その瞬間に思いは形骸化しそうな気もする。そして伝えきれたらもう伝える必要はなくなってしまう。

伝えきれないからこそ、いろんなやり方でどうにかして伝え続けようとするんだろう。伝わりきれない思

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言葉が思い出せない

眠りが浅いのだろう、色んな夢を見た。

どんな夢だったかはうろ覚えだけど、最後、誰かにとても大事な言葉を伝えたところで目が覚めた。

どんな言葉を伝えたかは思い出せないけど、すっごく大事な言葉だったという意識だけはあるので思い出せなくてもどかしい。 

ある作家は、枕元にペンとメモ帳を置いて、夢を見たらすぐに起きて覚えている内容を書き留めたりしてるらしい。

僕の友達は見た夢をテーマにした漫画を描

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直感について

直感は正しくないって人もいるし、直感こそ正しいって人もいるけど、最近よく思うのは正しさの問題じゃないのでは、ということだ。

正しさってとても不安定だし。

そのことについて考え抜いた結果生まれた直感なら、そこに思いを、時間を、人生をかける価値があるってことなんじゃないか。

だから考え抜いたという自負がある上での直感なら迷わず進めばいいと思う。

常に「お前のその直感は、かける価値のある直感なの

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カズオイシグロの書き方

ノーベル文学賞も受賞した世界的な作家、カズオイシグロは、出世作である「日の名残り」をほぼ4週間で書いたという。

その時の書き方が面白くて、とにかく文体とか整合性とか稚拙な表現とかを構わずに、頭に思い浮かんだことをとにかく書くやり方だったらしい。

そして4週間後には書くべき要素がすべて揃っていたそうだ。

カズオイシグロだから、才能があるから、という話はさておき、このやり方は企画書を書くときも有

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意識高い系という言葉

意識高い系という言葉が苦手だ。

例えばヨガをやっている人のことを「意識高い系」とひとまとめにして、そこで思考停止するような。

ここからは想像だが、例えばヨガは信仰に近いようなものなのではないだろうか。

信じられる何かはいつの時代も必要で、それが昔は宗教だったのだけれど、それが薄れてしまった今、信じられる何かの一つとしてヨガがある、というような。

ヨガの先生を導師って言ったりするし。

そし

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