マガジンのカバー画像

座談会〜動物から考える社会運動

45
運営しているクリエイター

#ヴィーガン

アニマルウェルフェアはなぜ大事?③【ゲスト:アニマルウェルフェア・コーポレート・パートナーズ】〜ちょこっと文学談義——動物と文学作品

アニマルウェルフェアはなぜ大事?③【ゲスト:アニマルウェルフェア・コーポレート・パートナーズ】〜ちょこっと文学談義——動物と文学作品

*②の続きです。

消費者一人一人にできること——感情を動かして伝える

——消費者1人1人には、どういったことができるか、アドバイスをいただけますか?

上原
やっぱり、自分のお金を出して買う食べ物がどこから来ているのかについては、もっと興味を持ってほしいです。ただ単に数字だけを見て判断するのではなく、トレーサビリティとも少し異なる視点で、食の安全だけでなく、家畜たちがどのような環境で飼育されて

もっとみる
アニマルウェルフェアはなぜ大事?②【ゲスト:アニマルウェルフェア・コーポレート・パートナーズ】〜運動を成熟させていくために——動物、野宿、フェミニズム

アニマルウェルフェアはなぜ大事?②【ゲスト:アニマルウェルフェア・コーポレート・パートナーズ】〜運動を成熟させていくために——動物、野宿、フェミニズム

*①の続きです。

アニマルウェルフェアはなぜ大事?

——アニマルウェルフェアについて話を深めていきたいと思います。そもそもアニマルウェルフェアがなぜ大事なのか、まほさんの考えを聞かせていただけますか?

上原 家畜については、現実的に言うと、そんなすぐにはなくなっていかないだろうと思うんです。たとえば、卵に関して、今はプラントベースの卵がたくさん出てきていますが、企業の中には、「プラントベース

もっとみる
アニマルウェルフェアはなぜ大事?①【ゲスト:アニマルウェルフェア・コーポレート・パートナーズ】〜日本でのケージフリーの動き

アニマルウェルフェアはなぜ大事?①【ゲスト:アニマルウェルフェア・コーポレート・パートナーズ】〜日本でのケージフリーの動き

動物保護運動、特に畜産動物の問題に取り組む活動家の多くはヴィーガンやベジタリアン。でも本当は、肉や魚・卵・牛乳を消費する人にこそ、家畜の問題に向き合ってほしい!!! 今回は、ヴィーガンやベジタリアン以外の人にも動物の問題を自分ごととして捉えてもらう方法を考えるため、これまで多くの企業に対してケージフリーの取り組みを促してきた「アニマルウェルフェア・コーポレート・パートナーズ」の上原まほさんをゲスト

もっとみる
ハン・ガン『菜食主義者』をヴィーガニズムの観点から読む

ハン・ガン『菜食主義者』をヴィーガニズムの観点から読む

先日開催した年末特別読書会企画「ハン・ガン『菜食主義者』をヴィーガニズムの観点から読む」を公開しました!
ヴィーガニズム、フェミニズム、性暴力、クィア、病など、さまざまな観点から議論しています。
クリスマスプレゼントにおすすめ作品紹介もあるよ。

2024/12/15

参加者

【レギュラーメンバー】
司会:深沢レナ(大学のハラスメントを看過しない会代表、詩人、ヴィーガン)
生田武志(野宿者ネ

もっとみる
動物問題と部落差別(序)③攻撃性の連鎖を止めることはできるか?

動物問題と部落差別(序)③攻撃性の連鎖を止めることはできるか?

*②の続きです。

フェミニズムの攻撃性――「自分たちは報われない」という悲壮感
——「肉を食べないのは部落差別だ」というのもそうだし、さっきの「農家さんがかわいそうだろう」というのもそうですけど、こういうのってなぜか第三者が言ってくることが多いんですよね。当事者ならともかく、どうして第三者が激昂して言ってくるのだろう、という点も気になります。

栗田 今回深沢さんが受けたひどい発言の数々は、深沢

もっとみる
動物問題と部落差別(序)②日本の肉食禁止と差別の歴史

動物問題と部落差別(序)②日本の肉食禁止と差別の歴史

*①の続きです。

(文責:深沢レナ)

日本の肉食禁止と差別の歴史

――日本って675年に肉食禁止令が出されてから、長い間、国家が肉食を禁止していましたよね。そのことによって肉食に対する差別が生まれたのでしょうか?

生田 歴史的な問題については僕もそんなに詳しいわけじゃないんですが、『いのちへの礼儀』を書くときにかなり調べました。

日本では飛鳥時代の675年に最初の肉食禁止令が発布されるん

もっとみる
動物問題と部落差別(序)①ヴィーガンは部落差別?

動物問題と部落差別(序)①ヴィーガンは部落差別?

ヴィーガンである深沢が、先日あるフェミニズムのイベントで動物問題について発言したところ、2人のフェミニストから「ヴィーガンは部落差別だ」と激しく批判される出来事がありました。ヴィーガニズムを広めることや、動物の置かれた現状を改善することは本当に部落差別なのか? 日本の肉食禁止と差別の歴史を振り返り、天皇制と部落差別の関係、フェミニズムの加害性にまで踏み込み、動物問題と部落差別のあり方をレギュラーメ

もっとみる
動物運動小史④別の何かを踏みつけないために

動物運動小史④別の何かを踏みつけないために

*③の続きです。

動物にたとえる必要性

——次の質問です。「井上太一さんの本をたくさん読ませていただいております。現在パレスチナに対して行われている虐殺に関して、イスラエルの防衛大臣がガザの人たちを「人間動物(ヒューマンアニマル)」と呼び、虐殺の一つの心理的な証拠になりました。保井啓志さんという研究者が、井上さんの著作を引用しながら、批判的動物研究とセクシュアリティ、パレスチナ、ケアなどを交差

もっとみる
動物運動小史③寄り添い(ケア)の倫理/狩猟をめぐって

動物運動小史③寄り添い(ケア)の倫理/狩猟をめぐって

*②の続きです。

寄り添いの倫理(ケアの倫理)とは

——生田さんと井上さんは、ウェブ上でそれぞれの著書の書評を書かれて、その上で、いくつか異なる立場を巡って論争されています。とても面白いので、興味のある方はぜひ読んでいただければと思います。

 その論争の一つが、先ほどからちょくちょく名前が出ている「ケアの倫理」で、井上さんの訳だと「寄り添いの倫理」と訳されています。まず、ケアの倫理とは改めて

もっとみる
動物運動小史①ヴィーガニズムの広まり/養豚場で働いてみて見えたこと

動物運動小史①ヴィーガニズムの広まり/養豚場で働いてみて見えたこと

2023年下半期からはじめたシリーズ「動物問題連続座談会」。第7回目は、動物倫理に関する数多くの本を日本に紹介してきた翻訳家の井上太一さん、静岡県川根本町で古民家カフェを営む文芸評論家の川口好美さんをお招きし、日本・海外における動物運動や思想の流れ、運動を担ってきた女性たち、寄り添いの倫理(ケアの倫理)とは何なのか、狩猟の是非など、時に同じ・時に異なる意見を持った4人でとことん議論を重ねました。

もっとみる
はじめて学ぶ「動物実験」④Q&A

はじめて学ぶ「動物実験」④Q&A

*③のつづきです。

海外の運動との違いは?
生田 僕は先日フィリピンの貧困問題の現場に行って意見交換してきて、いろんな刺激を受けたんですが、JAVAさんは各国の支援団体と連携して日本との違いを感じることはありますか?

和崎 一番はやはり規模の違い——それは動ける人員の人数の違いもそうですし、財政的な点でも違いを感じます。やはり海外の大きい団体はすごい豊かで、サポーターの方の数も違います。何十万

もっとみる
はじめて学ぶ「動物実験」③わたしたちにできること

はじめて学ぶ「動物実験」③わたしたちにできること

*②の続きです。

犠牲になっている動物のことを考えずに医療を受けられる権利

——私達はこれまで座談会を半年やってきて、畜産の問題や動物園の問題は特に踏み込んで見てきたのですが、動物実験については私も不勉強だったので新しい発見がありました。

 やはり、畜産・動物園よりも一層、動物たちが道具として使われる、そして使い終わったら廃棄されることが肯定されている分野だという印象を受けました。畜産の場で

もっとみる
はじめて学ぶ「動物実験」②動物実験をなくすためには?

はじめて学ぶ「動物実験」②動物実験をなくすためには?

*①の続きです。

動物実験の代わりにどうしたらいい?——さまざまな代替法

和崎 では動物実験がいけないのであればどうしたらいいかについてですが、「動物実験は良くない」という声が増えたり、動物実験に反対する人たちの世論が高まってきて、それを受けて研究開発され始めたのが、動物実験の代替法です。

 1959年、イギリスの研究者のラッセルとバーチによって、「人道的な実験技術の原則」が提唱されました。

もっとみる
はじめて学ぶ「動物実験」①そもそも動物実験ってなに?

はじめて学ぶ「動物実験」①そもそも動物実験ってなに?

2023年下半期からはじめたシリーズ「動物問題連続座談会」。第6回目は、
動物実験の実態について学ぶために、特定非営利活動法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)より、事務局長の和崎聖子さん・理事兼事務局職員の石島伊代さんをお招きしました。動物実験はどこで行われているのか? 実験に使われる動物はどこからくるのか? なぜ動物実験はいけないのか? といった基礎知識から、動物実験がなくならない理由、なく

もっとみる