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Sweet Cloudy【詩】

Sweet Cloudy【詩】

この小さな世界はまだまだ寒くて
わたしはつぼみを見つけてもいない
水玉のてぶくろをはずし太陽にかざしてみる

ブラウンな細いギターの音をなだめつつ
ピアノクラシックを流し始め
イチゴ柄のクルトガを手にとる

キャンパスノートの3ページ目は痩せていて
はちみつキャンディはクチの中をまわる

人を愛でるための言葉を求めて
開いたのは小学校時代の国語辞典
”ほほえみ”の説明には彼の似顔絵が添えられていた

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生について

生について

太陽の音漏れが硬い東京に響く
巨大な本棚に生命が宿る

傲慢なアクリルがきれいに並ぶ
取り囲まれる理性の中枢

四肢全身の鉄線が赤く
濃い血色の奇熱を抱える

どうしてこうなってしまう
歴史を変える瞬間はあったのか
行動はいつもベストだったか
なるようになるのか
疑問の湧き方から問いただして

月の囁きが淡い大阪に転ぶ
小心の老父から魂が抜ける

怠慢なステージが汚く稼ぐ
積み重なる悲哀の缶詰

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【詩】わたしの小さな赤色の刺繍

【詩】わたしの小さな赤色の刺繍

家賃3円の微笑み
みんなに知られることはない
でもたしかに今ここにある
メシメシ言う床が
あの人と歩くアスファルトに似ている

飴玉の薄味の哀しみ
みんな知らなくて
もうすぐ無くなってしまう
包み紙をクシャッと丸め
空気を甘くする

靴ひもだけ売られている記憶
みんなに忘れられそうで
覚えておきたいの
使い所のわからない豹柄が
鎖骨に引っかかっているような

イヤホンの予備部品な体温
みんなは忘れ

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これぞ、理想の初夢

これぞ、理想の初夢

ルールル ルルル ルールル ルルル
ルールールールー ルールル

何よ久々にデート?
しかも富士山?

登山きっつ!
カイロ3つ!

え、うそでしょ……
富士山の白って特大の盛り塩だったの?

あ、怪盗キッド!
わたしを奪って!

え、ほんとに奪ってくれるの?
きゃー嬉しい

ていうか、なんでこんな高いところ飛んでるの?
高いところ好きな小学生くらいの頭脳なの?

あれ、普通に、怪盗と空を飛びなが

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今日が寒い理由【詩】

今日が寒い理由【詩】

昨日も今日も寒くて
明日もきっと寒い
なぜなら心が寒いから

硬い窓を開け放って
冷たい部屋の濁った空気を回して
日替わり弁当で気分を和ませる
ノートパソコンの熱はカイロ代わり

友だちになった君は次の恋を探している
新しいセーターがよく似合ってるよ

「別に嫌いになったわけじゃない」
ときどき人ごみから君の声が聞こえてくる気がして
急に足を止めるから人とぶつかってしまう

自分が悪くもないことで

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雪なきホワイトメモリー【詩】

雪なきホワイトメモリー【詩】

外の世界はキラリ
雪が無くても震える寒さ

おつかいに慣れた人差し指
もどかしく拾う一円玉

いつもより赤く
笑っている近所のスーパー

うるさい手羽先を横目に
安ければ牛乳を買う
好きなお菓子は一つだけ

外の世界はキラリ
雪がなくても震える寒さ

借り暮らしのアパート
湿っぽいドアノブ

野菜をしまう冷蔵庫
僕の身長と同じくらい

おじいちゃんのお迎えで帰ってきた妹
リビングのマットに横たわる

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【詩】ひえる熱憶

【詩】ひえる熱憶

秋雨前線忘れた頃

日々が青く白く染みていく

朝の硬いアパートが小鳥につつかれる

なけなしの雑草がプードルの肉球に触れる

隣人の肩に薄い綿が降る

国道の脇で準備中のスーパー

痛風にさらされる違法駐輪のシール

表面が凍り始める第五小のプール

人が通っても人が通っても窒素は分かれない

不織布マスクの内側にできた水滴を嫌う

最寄り駅前の君はため息も着こなす

喫茶店の小さい看板がカタカ

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なんかイライラする夜に【詩】

なんかイライラする夜に【詩】

家を飛び出して林檎をかじりたい

サラダバーでハムばっか食べたい

シラスを味噌汁にぶちこみたい

脱脂粉乳も味方につけたい

お酒にも性にも頼りたくはない

長い冬を転売したい

成長途中すぎるんだよ

あいつの醍醐味は俺が一番よく知ってる

鋭利な陰口は銃刀法違反かよ

社会の窓は自動ドアみたいであれ

窓際でお気に入りの鉛筆が凍えてた

お前らは本気で死にたいと思ったことないだろ

とりあえ

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【詩】秋は独りよがり

【詩】秋は独りよがり

無邪気に飛び込むよ

百葉箱にできた蜘蛛の巣

晒されないと思ってた

独りよがりの秋の芸術

不覚にも咳き込むよ

パスワード忘れた段ボール

堂々としてるわけじゃない

いつだって本屋は瀬戸際

粗相は身に覚えがないが

波の間で激しく微分

人参を迷わず輪切りする

ブレーキ忘れて散文調

揺れる背中を追いかけて

闇に飲まれる大人のまごころ

隣の植木鉢を見よう

萩の花と涙する朝

リチ

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オリオン座ってよ【詩】

オリオン座ってよ【詩】

よく晴れた涼しい夜
小さい喧嘩でつまずいた
一人ベランダでタバコ

不意に目が合ったから
オリオン座と世間話
ビリヤードでもしませんかと
口説いているつもりですか?
あいにく球技は苦手なんです
玉葱を切ると涙が出ちゃうから

あなたのこと少し忘れます
オリオン座と七並べして待ってる
女王の肩書はお荷物
兵士さんが来るのを待ってる

オリオン座には家が無いんだって
だからって泊めてあげるわけにもいか

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【詩】ベタベタな青い夏

【詩】ベタベタな青い夏

いつ始まったのかわからない
僕らの青春熱中症

廊下から牛みたいなサックスの音色
教室でしっけた駒が盤を鳴らす

視聴覚室も軽音学部も
言葉の意味はわからずに
中庭でリズムに合わせて舞う蝶々

濡れた床をモップで拭いて
バッシュを擦らす体育館
よそ見の先にバレー部の先輩

サッカー野球に陸上に
すみ分けるグラウンド
混ざり合う掛け声

早々に塾へ行くも16時
買ったばかりのポロシャツも汗がしみ

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押し入れ宇宙【詩】

押し入れ宇宙【詩】

あるいは友の印象世界
フ―ジンライジングサン
物産展沖ノ鳥島展
秘密基地の買取価格
林に挟まれる冷蔵庫
アスファルトで食あたり
地震で崩れた雪だるま
枕元で鳴く白鳥の剥製
墜落するネズミ型飛行機
サスケという女
遠き日のサンドイッチ
別府温泉で火傷するカバ
足元にあった彫刻刀
冬に結婚する血糖値
マグネシウム
液晶パネル
バナナが咲くから土管に隠れる
コップの持ち方教室出禁
銃口をしゃぶる蔦葉

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【詩】哀と世界

【詩】哀と世界

秋ですねと君が言った

イチョウの手先が一葉舞った

秋だねと僕は言った

モミジの足元 滲んで笑う

傾く電柱

花開く映画座

くるりと回る牛丼屋

春ですねと君が言った

若木の隙間に光が揺れる

春だよねと僕は言った

大樹の周りでゆっくり泣いて

震えるネオン

朽ちていく三行

うねる桜の色を塗る

冬だねと君が言った

ぼーっと眺める高層ビルの地上階

冬だよねと僕は言った

キスの

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【詩】喜節は夏

【詩】喜節は夏

時代は今
炭酸とレモンが似合うさ
日本酒飲んだ冬を忘れるよ

祖母に教えてもらったレシピ
ぶつ切りのナスを煮込んでいたら
思考は途切れ途切れになる

ぶっ倒れる人もいるくらい暑いのに
外へ連れ出してくれる君がいて
差し引きしても余裕で幸せ

さよならは言わなくて
またねと笑顔で夏揺らす

アパートの裏
背伸びする木々
若い葉っぱが静かにおしゃべり

グラウンドの隅
干からびる日々
苦手なポカリが美

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