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【詩】ひえる熱憶
秋雨前線忘れた頃
日々が青く白く染みていく
朝の硬いアパートが小鳥につつかれる
なけなしの雑草がプードルの肉球に触れる
隣人の肩に薄い綿が降る
国道の脇で準備中のスーパー
痛風にさらされる違法駐輪のシール
表面が凍り始める第五小のプール
人が通っても人が通っても窒素は分かれない
不織布マスクの内側にできた水滴を嫌う
最寄り駅前の君はため息も着こなす
喫茶店の小さい看板がカタカタ震える
木製ドアを押すと金属のチャイムが光る
ピアスを外したばかり耳が暖房を伝える
ショーケースからガトーショコラの微笑みが聞こえる
君は気さくな趣向をはみ出した明るさ
紅茶の飲み方ひとつで冷める
店主のウシっぽい鳴き声で目覚める
今はマンデリンと二人きり
千円札に乗るレシート
「円」は薄くなっている