高山 環 (小説家)

小説家。「第12回ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作の「夏のピルグリム」が発売中:htt…

高山 環 (小説家)

小説家。「第12回ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作の「夏のピルグリム」が発売中:https://x.gd/eTuhX 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」(宝島社文庫)も販売中:https://x.gd/lJ4zX 他の著作:https://x.gd/Afn9R

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  • 「夏のピルグリム」

    「第12回ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作の「夏のピルグリム」が7月18日に刊行されます。著者初の単行本形式の小説です。 心の喪失を抱えた13歳の少女が日本各地を旅して、さまざまな人と出会い、回復していく冒険物語です。

  • 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」

    著者初の商業出版「ふたりの余命  余命一年の君と余命二年の僕」についての記事をまとめました。

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「ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作の「夏のピルグリム」発売中

「夏のピルグリム」の刊行が決まりました。ポプラ社より7月18日に発売されました。 「夏のピルグリム」は「第12回ポプラ社小説新人賞」の奨励賞をいただいた作品です。著者初の単行本形式の書籍になります。 受賞してから1年半、ずっと改稿・修正を続けて完成させました。ここまで時間をかけてひとつの作品に向き合ったのは初めての経験です。 善い作品になったと思います。ぜひ多くの人に読んでいただきたいです。 表紙はイラストレーターのKUさんに描いていただきました。デザイナーは岡本歌織さんで

    • 小説を書けなくなったことはない

      今まで小説が書けなくなったことはありません。いつでも書きたい小説があり、書き出せば止まることはありません。 もちろん、途中でこの後の展開をどうしようかなと迷うことはありますが、ラストが決まっているので、心を寄せていれば登場人物が勝手に動き出し、物語は滞りなく進んでいきます。 ですから、書くネタがないと悩んだことは多分一度もないはずです。Evernoteのノートブックにストックしている書きたいネタは、常時30作品以上あります。 ただ、書きたいネタがあれば問題がなく傑作がバンバ

      • 地図好きが小説執筆の役に立つ

        昔から地図を見るのが好きです。子供の頃は、世界地図や日本地図をずっと眺めていて、国名や地名を覚えていました。 運転免許を取得して、地図で見た場所に自分で行けるようになった時は嬉しかったです。 当時は、紙の地図でした。今ではちょっと信じれませんが、どの車にも分厚い道路地図が載っていて、新しい場所へ出かける前に地図を広げて道を確認するのが普通でした。 PCで地図を見られるようになったときは衝撃的でした。当初はネットではなく、結構高めのソフトを買い漁りました。 カーナビに使いたくて

        • 月に1冊も読書しない人が6割以上いる中で、小説家ができること

          6割以上の人が月に1冊も本を読まないことが、2023年度「国語に関する世論調査」で明らかになりました。 今までの調査結果の中で最低の数字で、5年前の数字より15.3ポイント増えています。ネットの記事を読んでいても本の話題が減ったとは感じていたましたが、急速に本離れが進んでいることが、皮膚感覚的ではなく数字で明確になりました。 この数字は電子書籍を含んでいるので、紙の本だけではなく書籍離れが急速に進行していることになります。 ネットなどの記事は75.3%の人がほぼ毎日読んでい

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        • 「夏のピルグリム」
          49本
        • 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」
          17本

        記事

          小説家になる夢を信じられなかった

          大学生の僕は小説家になる夢を持っていながら、普通に就職しました。仕事をしながら執筆するのは今では普通のことですが、当時は就職をせずに夢を叶えるために精進する人が一定数いました。 同級生の中にもフリーターをしながら俳優を目指す人がいました。 どうして夢だけを目指さなかったのか。 「普通」と言われる道から外れることが怖かったのだと思います。多くの同級生が就活をしている中で、その流れから外れる勇気がありませんでした。 中学、高校、大学といわゆる「普通」の人生を歩んできて、就職とい

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          ネットフリックス「地面師たち」で知る「わかりやすさ」の正体

          遅ればせながら、Netflix 「地面師たち」を鑑賞しました。映画のように全編を一気に観てしまいました。 多くの人がすでに様々なメディアで言及しているので、今更付け加えることは少ないのですが、「地面師たち」を鑑賞して僕がもっとも感心したのは「わかりやすさ」です。 「地面師たち」は、実際にあった事件を参考にして書かれた小説を原作としています。 あくまでもフィクションですが、実際の事件がもとになっているので、現実の商慣習や犯行内容から大きくは逸脱していません。 観る人は土地取引

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          小説を書いて見返りを求める

          他人になにかをしてあげると見返りを求めてしまうのが人情です。SNSで「いいね」をもらいたくなる承認欲求を抱く人も多いでしょう。 小説を書く者の性として、読んだ人から感想やリアクションが欲しくなります。 長い時間をかけて、精魂込めて書いた小説が誰に読まれず、感想ももらえなかったら、ちょっと辛いですよね。 普段の生活では、僕は見返りが欲しい方ではないのですが、小説に関しては多くの人が読んで感想をもらいたい気持ちが強いです。 それは、読者がいて初めて小説は成立すると思っているか

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          小説にもキャラクターグッズが欲しい

          アニメやコミックのグッズ収集が趣味な人は昔からいました。最近では、推し文化と融合して、膨大なグッズが販売されていて、大きな売り上げになっています。 でも、小説のグッズって少ないですよね? 販売している小説のキャラクターグッズを見たことがほとんどありません。 アニメやコミックと違い、小説には「絵」がないので、キャラクターグッズがないのは当然だと言う人がいるかもしれませんが、アーティストやお笑い芸人のライブでもキャラクターグッズが作られています。 アーティストや芸人をキャラクタ

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          漫画家も楽じゃない

          コミック業界は昨年過去最高の売り上げを叩き出し、絶好調です。総部数一億部突破とか、小説では考えられないほど景気の良い話が飛び交っています。週刊誌の部数は減ってきていますが、Web雑誌がたくさんあり、作品を公開する場所は増えています。 書店が毎日減っている現状でも、電子書籍の売り上げが紙の本の減少を補っています。 小説家からすると、うらやましい限りです。 でも、当たり前ですが、漫画家さんも楽ではありません。一億部を突破するようなヒット作はごくわずかです。デビューはできても、人

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          読者のことを考えて、小説の視点数を決める

          小説の型式を決めるもっとも重要な要素のひとつは、視点の数だと思います。 一元視点なのか複数視点なのか、どちらの視点をとるかによって、小説の型が決まります。 一元視点とは、常にひとりの視点から物語を見る型式で、複数視点は2名以上の登場人物の視点が入れ替わって風景や心象を描写する型式です。 小説の型というと、一人称か三人称かが議論されがちですが、一人称でも三人称でも一元視点なら、ひとりの視点から語られるので、物語の型は大きく変わりません。大抵の場合、一元視点=主人公の視点ですので

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          小説家が執筆に使うiPhone 16を徹底比較してみた

          会社員時代は、毎年新しいiPhoneを買い替えていましたが、小説家を目指すようになってからは外出する頻度が減ったので、あまり買い替えなくなりました。 今はiPhone 12 miniを4年間使っています。コンパクトで気に入っているのですが、バッテリーが保たなくなってきたので今年は買い替えようと思っています。 買い替えたモデルも長く使うと思うので、先週発表されたばかりの最新のiPhone 16シリーズから選びたいです。 小説家の観点で、どのiPhoneを買うべきか考えてみます

          小説家が執筆に使うiPhone 16を徹底比較してみた

          面白いことに時間をかける

          Xを眺めていると、怒っている人のポストを見かけることがあります。結構多くの人が社会や職場、政治に対して怒りをぶつけています(その種のポストを見てしまうから、大量に表示されるのかもしれないけど)。 僕はXに怒りのポストをすることもありませんが、日常でも怒らないようにしています。怒ればエネルギーを使うし、時間も消費しますので。ケチなんですよね。 理不尽なことへの批判や怒りがダメということではないです。人には怒らなければいけないこともあるでしょうし、怒ることによって、心のバランス

          面白いことに時間をかける

          小説と映画は1対100の戦い

          アニメーション制作会社の「ピクサー」は、一本の映画を12人の脚本家が担当するそうです。脚本家からあがってきた脚本をプロデューサーやアートディレクターなど100名近い人員ですべてのシーンについて何度も議論し数年をかけて脚本を完成させるそうです。 ピクサーでは全員が納得しないと脚本は完成しません。数年に及ぶ議論を経て、脚本は徐々に洗練されていきます。だから矛盾がない、多くの人が感動できる映画が作れるわけです。 小説家は編集者の方などの助言はありますが、基本的にはひとりで小説を

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          忙しいと言わない

          商業デビューしてから、依頼を受けて小説を書くようになりましたが、「忙しい」と思ったことはありません。やるべきことはいつもあるけど、忙しいと感じたことはないですね。 会社員時代も、そこそこ仕事はあったし、若いときは徹夜で働いたこともあったけど、それでも忙しいと感じたことはありませんでした。 仕事をしながら夜中に小説を書き、もっと時間があったらと思うことはありましたが、忙しくはありませんでした。 なんで忙しくなかったのか。それは「忙しい」と思わなかったからです。 いつどうして

          忙しいと言わない

          AIが小説を救う?

          他の時間芸術のエンタメに比べて、小説がとっつきにくいことのひとつは、読者が自分で文字を読んでいかなければいけないことです。 映画やアニメであれば、観客は画面を観ていれば内容が頭に入ってきます。忙しくて手が離せないなら、別の作業をしながらでも鑑賞できます。画面をチラチラ見ていても、耳で聴いていればある程度の内容を把握できます。 マンガはページを捲る必要がありますが、最近はスマホでタップしながら読めるので、指の作業量は減りましたし、片手で持つことができます。 小説の場合は、手で本

          AIが小説を救う?

          小説における「第四の壁」

          「第四の壁」という用語をご存知でしょうか。舞台の客席側にも4番目の壁があるかのように観客を気にせず俳優たちが演技することを指す演技用語です。 一般的な演劇では、観客はいないもののように扱います。俳優が客いじりする劇は少ないですよね。 一般的な映画とドラマも観客というより観客の目の代わりとなるカメラを意識しません(例外はあります)。カメラと第四の壁の違いは、視点が固定されていないということです。舞台における観客の目は、基本的に前方にありますが、カメラはさまざまなアングルから撮影

          小説における「第四の壁」