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2023年5月の記事一覧
ハードボイルド書店員日記【137】
「『おもしろき こともなき世を おもしろく』ってこの人?」
衣替えに焦がれる平日。
扇風機が回れども脳はパープルヘイズ。
荷物の量は相変わらず。
手帳の返品やフェアの入れ替えで忙しない日々。棚卸しのXデーが迫ってきた。徐々に減らしていく。業者にカウントしてもらう場合でも一冊いくら。少ないに越したことはない。
最後のレジが終わる。あとは定時まで30分品出し。歴史や宗教、哲学の棚へ補充分を出す。
ハードボイルド書店員日記【136】
「どんなに成功してても、こういう人間はダメだよな」
小雨がぱらつく平日の昼下がり。半休だ。職場から遠ざかり、広い交差点に面した急な階段を下る。古びた自動改札に昭和を感じ、記憶違いに気づいて苦笑を噛み殺す。数年前までは連日使っていた路線だが、利用したことのある駅はふたつしかない。
なぜ急に行く気になったのか。目的らしきものを後付けで見出したときにはすでに電車を降り、すれ違いに気を配りつつ狭い路地
ハードボイルド書店員日記【135】
「この本が欲しいんだけど」
連休が終わった翌週の土曜日。週末とはいえ客足は疎らだ。カウンターでカバーを折り、パソコンで週明けに入荷する本をチェックする。担当する棚の荷物が少なくても、雑誌とコミックの量が多ければ同じことだ。
年配の男性に声を掛けられた。くたびれた透明なビニール袋から単行本を取り出す。ダイヤモンド社が刊行した池井戸潤「ロスジェネの逆襲」だ。背表紙にラベルが貼られている。図書館から
ハードボイルド書店員日記【134】
”Do you need plastic bag?”
連休のど真ん中。朱雀大路。日を追うごとに薄着の観光客が増えていく。見た目がどうであれ、最初は必ず日本語で「レジ袋は要りますか?」と訊ねる。誰に対しても。ここは日本だから。外見で人を決めつけるのは差別と分断の第一歩だから。もし自分が外国へ行った際、中国語や韓国語で話し掛けられたらどう思うか?
すべてのお客さんとフェアに接したい。どれだけ往復さ