2023年1月の記事一覧
ハードボイルド書店員日記【121】
「『ぼっち・ざ・ろっく』ありますか?」
記録的な寒気が続く平日。昼過ぎになっても店は閑散としている。最初の緊急事態宣言が出た後のJR渋谷駅周辺が頭に浮かんだ。
荷物を出し終え、版元から直で入荷した本の返品を作る。ハンディターミナルでISBNを読み込み、冊数を入力し、ダンボールへ詰める。誰が担当というわけでもない。誰もやらないからやっている。平常運転。
箱をひとつ閉じたところで声を掛けられた。
ハードボイルド書店員日記【120】
「先を越されたな」
入荷の多い金曜日。翌日は休配だ。トラックのドライバーにも2日休む権利はある。人手不足の書店にとっても荷物がないのは助かる。前日の朝が大変なのはやむなしだ。
開店前に生命力の8割が削られた。朝10時の時点で出汁を取られた鶏ガラ。それでもレジに1時間入る。お客さんが来る。電話も鳴る。どうにか凌いて棚へ。12時までに出せる量ではない。昼休憩の後は他にやることがある。だが時間になっ
ハードボイルド書店員日記【119】
「実は俺、来週いっぱいです」
確変が終わった1月の平日。人手不足は相変わらず。年末年始で売れた補充分が入ってくるので荷物は多い。客足が鈍いから回せているが、春休みになれば同じ悲劇が繰り返される。無理をしてどうにかできている状況は厳密に言うとどうにかできていない。根性とは予め計算に入れるものではなく、上層部の目論見違いを下が尻拭いする緊急手段なのだ。
昼休みから戻ってカウンターに入る。文庫担当が
ハードボイルド書店員日記【118】
「息抜きにすぐ読める本、あるかな?」
繁忙期が続く正月明け。入荷は4日に再開した。雑誌と新刊はそれなりの量が来ている。補充分はまだ少ない。一部の棚で地肌がだいぶ露出している。ひとつの風物詩だ。すぐ戻る。
自分の荷物を出し終え、担当が休んでいる実用書に取り掛かる。「ゲッターズ飯田の五星三心占い 2023」が種類によっては売り切れている。惜しい。占い本と暦は年末年始が最大の稼ぎ時なのだ。ビジネス書
ハードボイルド書店員日記【117】
「諦めたらそこで試合終了ですよ」
大晦日。クリスマスが終わっても連日混み続けている。体感的にはいまの方が厳しい。人手不足の豪雨に有休休暇の暴風が加わったせいだ。同僚が休むことに不満はない。正当な権利だ。しかし取る人と取らない人がはっきり分かれている状況には是正の余地がある。朝礼で「三が日の人員が不足しています。時給が上がるから稼ぐチャンスです!」と煽られても欠伸しか出ない。
「あれは冷めますね