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小説 ナボ マヒコ(Nabo magico)

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1989年マドリッドの片隅で不思議な時が流れていた。ある留学生の物語
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2021年6月の記事一覧

ナボ マヒコ(Nabo magico)10

気が付くと僕は、いつもの日本レストラン『一番』のカウンターにうつ伏していた。 飲み潰れて…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)11

酔いが一気に覚めてしまうようなぞっとする声だった。まだ一言もしゃべってないうちに、どうし…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)12

翌朝、昼過ぎになってようやく目の覚めた僕は、マリエに電話をしてみたが留守番電話のメッセー…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)13

途中、メトロに揺られながら、辛うじて機能している理性が頭をもたげてきては、「馬鹿なことは…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)14

「ごめん下さい。」と一応は言ってみたが、やはり返事はなかったので、僕は恐る恐る中へと入っ…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)15

『お久しぶりです。あなたとの約束通り、例の惚れ薬ナボ マヒコを用意させて頂きました。電話…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)16

不思議と恐怖心は既に消えていた。   ただ、なぜ男が此処で首を吊って死んだのか。その理由が分かるまでに、かなりの時間を要した。 男は『ナボ マヒコ』を手に入れるために自ら首を吊って死んだのだ!  植木鉢の中にある、白いクラゲの触手のようなものは、きっと、それに違いない! そう思った瞬間から、いや、実は、もっと前から僕の精神状態は正常ではなかったのだろう。僕は、首吊り死体の下にある大きな植木鉢の前にしゃがみ込むと、何かに憑かれた様に、その白いクラゲの触手みたいな芽のまわりに

ナボ マヒコ(Nabo magico)17

アパートの部屋に戻ってからの僕は、何とか今までに起こった出来事を理解しようと努めた。 ま…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)18

電話のあと、僕はまず、冷蔵庫に入れて置いた『ナボ マヒコ』を取り出し、流しの水で、丁寧に…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)19

僕の異常な視線に気がついたのか、マリエは「なによっ?」怪訝な顔でグラスを口から遠ざけ僕を…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)20

気が付くと、僕は、暗いトンネルを、ひとり走っていた。どんどん奥の方へ進んで行くとやがて突…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)21

翌朝、ジプシー達の歌声やトランペットのあまりの騒がしさに目が覚めた僕は、側で眠っているは…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)22

鍵がないっ!!  確かにあのとき、此処に戻してから逃げたはずなのに...      誰かが見つけ…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)23

プロレスラーのペドロモラレスがダイエットに失敗したような、その大男は白目の少し黄ばんだ鋭い眼光で僕を見据えると 「東洋人(チーノ)! あそこで何こそこそしてたんだ? 返答次第じゃ、俺はお前を警察(ポリシア)に突きだしてやってもいいんだぜ!」 男がドス効いた声でそう凄んでくるので、僕はその時ようやくこの男が刑事ではないことに気が付き少し平静を取り戻すことが出来た。そして、緊張で上手く回らない舌を何とかなだめながらスペイン語で Es Usted el portero de