ナボ マヒコ(Nabo magico)22
鍵がないっ!! 確かにあのとき、此処に戻してから逃げたはずなのに... 誰かが見つけて、持って行ってしまったのだろうか? それとも僕の思い違いで、実は、鍵はあのあと何処かへ捨ててしまったのか...
植木鉢の前でしばらくしゃがんだまま、そんなことを考えていると、突然、背後から物凄い力で、上体を引っ張り上げられ、そのまま羽交い締めにされてしまった。
Quien eres tu. Que estas haciendo aqui?
(お前は、いったい何者だ! ここで何してんだ!?)
僕の頭の後ろで太いダミ声の男の声ががなりたてている。しまった! 刑事が見張ってたのか! やっぱりこんな所に戻って来るんじゃなかった。 スペインなんかで警察に捕まっちまってこれから一体どうしたらいいんだ。日本語の話せる弁護士なんているのか...
恐怖と絶望で頭がパンクしそうだ。男のこの太く強靭な腕を振りほどいて逃げ出そうという勇気なんぞは、とっくの昔に、消え失せていた僕は、羽交い締めにされたままの姿で、ずた袋のように引きずられて、 階段右側にある、小部屋へとぶち込まれてしまった。
タイル張りの冷たい床に乱暴に転がされる。そして、その時、僕は初めて男の容姿を見ることが出来たのだった。男は、僕が東洋人であることに少し驚いた様子だった。
(つづく)
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