ナボ マヒコ(Nabo magico)17

アパートの部屋に戻ってからの僕は、何とか今までに起こった出来事を理解しようと努めた。

まず、イナモトという奇妙な男と一緒に酒を飲んだ。奴は、僕のために何か役に立ちたいと言って『ナボ マヒコ』という惚れ薬をやると言ったのだ。

そして、僕は約束通り男のアパートに行った...  まさか、奴が自ら首を吊って『ナボ マヒコ』を栽培するとは、夢にも思って見なかったが、奴は兎に角、一生のうちで、たった一度でいいから人様のために役に立ちたかったんだ。

奴が自らの命と引き換えに作った『ナボ マヒコ』が今、僕の手の中にある。これさえあれば、もう一度マリエを自分のものに出来る!

それで、僕が奴に感謝すれば全てうまくいくんじゃないか!  ああ、いくらでも感謝してやるさ!

その時の僕は『ナボ マヒコ』が効くことを信じて疑わなかったし、マリエの心を取り戻せるのなら、ひとりの人間の死なんてものは、本当に、どうでもいい代物のように思えていたのだ。

マリエ、マリエ

僕は『ナボ マヒコ』に頬擦りしながら彼女の名を呼び続けた。

その夜、やっとマリエに連絡を取ることが出来た。最後にたった一度でいいから直接会って話を聞いて欲しいと懇願する僕に、はじめのうちは頑としてNOと言い続けるマリエだったが、最後にはとうとう根負けして、彼女のアパートの近くにあるバル(Bar)で会うことになった。

(つづく)





 


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バナナ
なんと、ありがたいことでしょう。あなたの、優しいお心に感謝