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小説 ナボ マヒコ(Nabo magico)

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1989年マドリッドの片隅で不思議な時が流れていた。ある留学生の物語
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固定された記事

ナボ マヒコ(Nabo magico)1

今日から、少しずつ小説を載せていこうと思っています。舞台は1989年頃のマドリッドです。それ…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico) 2

店に入ると客はまだ誰もいなかった。カウンターの中でタバコを吸っていたマスターが僕の顔を見…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ (Nabo magico) 3

近くで更に彼を見てみると一見若そうに見えたがその頭髪にはかなり白いものが混じっていること…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)4

『Sueño』という名のバルは『一番』から通りを南の方へ30メートルほど行った所にある四ッ角の…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)5

「わたしも今年でもう、五十になりましたしね... えっ、見えないですか。それはどうも。ええ、…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)6

「『魔法の大根』、ですか...  そうですね、日本語にすればそうなりますか。まあ、名前なんて…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)7

ひとりになって、僕はあらためて、ついさっきまで店の中で彼が話していたことについて考えてみた。 魔法の大根、究極の惚れ薬...  しかし、そんな事を真剣に考えてる自分のことが急に馬鹿らしく思えてきた。そんなもの、あるわけないじゃないか!!  でたらめに決まってる!!  暇潰しに、ちょっとからかってやろうと思っていたのに、反対に、あのおやじに暇潰しの相手にされちまった。そう思うと何だか急に腹が立ってきて、つい、近くにあったごみ箱を思いきり蹴ってしまった。 静まりかえった通りに

ナボ マヒコ(Nabo magico)8

      夜、8時5分前、僕はマリエとの約束通りカフェテリア『マジョルキーナ』の前にいた。…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)9

僕は、一瞬どう答えて良いものだろうかと戸惑ったが、なるべく平静を装いながら 「へえー、そ…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)10

気が付くと僕は、いつもの日本レストラン『一番』のカウンターにうつ伏していた。 飲み潰れて…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)11

酔いが一気に覚めてしまうようなぞっとする声だった。まだ一言もしゃべってないうちに、どうし…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)12

翌朝、昼過ぎになってようやく目の覚めた僕は、マリエに電話をしてみたが留守番電話のメッセー…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)13

途中、メトロに揺られながら、辛うじて機能している理性が頭をもたげてきては、「馬鹿なことは…

バナナ
3年前
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ナボ マヒコ(Nabo magico)14

「ごめん下さい。」と一応は言ってみたが、やはり返事はなかったので、僕は恐る恐る中へと入っていった。 小さな踊り場を通ると中はサロンになっていて思ったより広々としている。天井にはこの部屋にはちょっと不釣り合いな大きさのシャンデリアがぶら下がっていた。 僕は、明かりをつけようとスイッチを探した。入り口脇の壁の隅にそれを見つけ、パチンと押すと、殆どの電球は切れていたらしく辛うじて三つほどの弱いオレンジ色の光が室内を照らすだけだった。 壁に張り付くようにして置かれた本棚には、ぎ