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小説

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小説のまとめ。短いものが多いです。
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#小説

がらくた

 三叉路で、檜山はわざと右に曲がった。家を出て五分、普通に歩けば約束の時間に充分間に合う…

橘 春
1年前
20

死や虹や愛について

 ゆっくりと傾く地球に合わせて、千夏の肩へ頭を預けようとしたときだった。死や、虹や、愛に…

橘 春
1年前
16

瞬きの呼吸 #3

 燈子が大阪を発ってから、一ヶ月と少し経つ。卒業式の翌々日、燈子はフェリーに乗って故郷へ…

橘 春
2年前
4

瞬きの呼吸 #2

 窓を見遣る。空はレトロなフィルターをかけたように色が薄く、燈子の写真を彷彿とさせる。三…

橘 春
2年前
6

瞬きの呼吸 #1

「桜って三月に咲くもんやっけ」 「今年がおかしいんよ」  テレビ画面には桜の蕾が映っていた…

橘 春
2年前
9

ひまわりは光の方を

 この教室はいつも真昼間だ。太陽のような青年、森崎光のまぶしさで、里恵の目はすっかりやら…

橘 春
2年前
5

なにもしない日

 湿った部屋の隅で、私は決心する。ベッドの下には酒缶が転がっていて、それから流れ出た甘ったるい液体が水たまりをつくっている。逃げるように目線を移せば、ベランダに散乱している洗濯物が視界に入った。散乱、ごちゃごちゃ、面倒臭い、といったフローチャートが脳内に浮かび、無意識にため息が漏れる。  けれど、私はそれを片付けようとも、掃除しようともしない。  決めたのだ。今日は「なにもしない日」にする、と。  面倒なことはなにもしない。自分がやりたいことだけをする。まず、私はテレビのリ

それが落ちたら

 それが落ちたら、と佑真は切り出した。風もないのに「それ」はゆらゆら揺れている。心臓から…

橘 春
4年前
10

駅、後ろ姿、高校時代のこと

 本当は、もう少し伝えたいことがあった。あなたのこういうところが嫌だった、とか、でも私も…

橘 春
4年前
7

三月下旬の所沢

 どうして人は、失わないとその大切さに気付けないのだろう。 「梨々香、久しぶり」 「………

橘 春
4年前
7

破壊された月

「速報です」  リモコンに触れてすらいないのに、バラエティ番組がニュースに切り替わった。…

橘 春
4年前
1

苗字が変わるかもしれない

 私の苗字が変わるかもしれない。  それは好きな人からの将来の約束でもなんでもなく、なん…

橘 春
4年前
7

また明日と笑ってください

 明日、私は、退部届を出す。  去年の春、高校に入学して間もない頃、家が隣の幼馴染である…

橘 春
4年前
9

香水

 暗い。  切れかかっている電球の真下が、この部屋でのわたしの定位置だ。灰色の敷き布団の上。大抵は仰向けに寝転んで、邪魔だと蹴られるまでそこを動かない。優吾の足がわたしの体に当たれば、アオムシみたいに少しだけ移動する。それを見た優吾が「気持ち悪い」と呟くまでが、わたしたちの日常だ。 「あ、まって、優吾」 「……なんだよ」  優吾が面倒臭そうに振り向く。わたしはそのぶっきらぼうさにときめいて、分解して、消化する。たまにむせてしまっても、この人はそれを見なかったふりをする。それで