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余地 死んだら、溶けて消えちゃうんやって。 雪じゃん。ほとんど。 私もそうなりたいな…
LIKE A FULL MOON 重い木の扉を押すと、頭上から涼しげな鈴の音がした。レジの奥はキッ…
それが世界の果てだと思っていたから、あの夜の痛みのことを、僕は未だに忘れられずにいる。…
三叉路で、檜山はわざと右に曲がった。家を出て五分、普通に歩けば約束の時間に充分間に合う…
ゆっくりと傾く地球に合わせて、千夏の肩へ頭を預けようとしたときだった。死や、虹や、愛に…
橙色に染まったカーテンが揺れ、土埃のにおいが鼻先に漂ってきた。それは鼻腔でもわりと膨ら…
燈子が大阪を発ってから、一ヶ月と少し経つ。卒業式の翌々日、燈子はフェリーに乗って故郷へ帰っていった。夏休みか春休みにでも、またこっちに戻って来れたらいいな、と言った。それらのことを、梓は後から知った。だから梓のなかで、卒業後の燈子についてはあくまでも「らしい」と付く。 夏休みか春休み、つまり、GWや冬休みは会えないということだ。夏休みまであと四ヶ月。そもそもそれは確約された未来ではなく、再会がいつになるのかは、きっと燈子も分かっていないだろう。卒業という通過儀礼を終え、燈
窓を見遣る。空はレトロなフィルターをかけたように色が薄く、燈子の写真を彷彿とさせる。三…
「桜って三月に咲くもんやっけ」 「今年がおかしいんよ」 テレビ画面には桜の蕾が映っていた…
この教室はいつも真昼間だ。太陽のような青年、森崎光のまぶしさで、里恵の目はすっかりやら…
湿った部屋の隅で、私は決心する。ベッドの下には酒缶が転がっていて、それから流れ出た甘っ…
ざく、ざく、とスイカの種をほじくっている夏海に、ふと、思いつきで僕は問いかけた。 「こ…
それが落ちたら、と佑真は切り出した。風もないのに「それ」はゆらゆら揺れている。心臓から…
本当は、もう少し伝えたいことがあった。あなたのこういうところが嫌だった、とか、でも私もこういうことしてごめん、とか。あなたはそれに反論してくれて構わないし、詰ってくれてもいい。詰り返すと思うけど。ただ、私の言葉をあなたの中耳に入れてほしい。 そうやって彼女を詩の一部にしながら、私は改札を出て左に曲がった。少し歩いてから振り向けば、彼女が私に背を向けひょっこ、ひょっこと家路を辿っている姿が見えた。全くと言っていいほど変わっていない後ろ姿を見つめながら、私は彼女との三年間を思