【詩】 月食
始まったばかりの春なのに
直射日光は瞼の奥に届き過ぎて
白木蓮とコブシの似通う魅惑は
あの歌声に近すぎて
見なくても良い光の向こうを
見ようとしてしまう
共鳴の危うさ
言語がない世界で
信じる感覚
極上の繊細さを隠すように
高らかに声を上げる
真顔の太陽も
形相を崩す自由を秘める
ビルの影には蒼白く
月がある
階調がかった恥じらいは
いつか無になり溶けてゆくもの
感触とは肌なのか心の襞なのか
あるいはもっと原始的な無意識
それとも蜂蜜を凌駕して飛んでゆく翅
時が先ゆけば
合歓の花が咲く
月が太陽を包む覚悟は
ブルートパーズを突き抜ける
優雅なため息はここにある
インカ帝国に流れ星一つ
私達は少なくとも
一人ではない
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あたたかなご支援をありがとうございます❤ みなさんのお心に寄り添えるような詩を形にしてゆきたいと思っています。