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本のこと

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読んだ本の感想です。
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2021年10月の記事一覧

色の辞典/新井美樹#60

色の辞典/新井美樹#60

たしか、この本は熊本市内の長崎書店で購入したのだったと思う。

長崎書店は上通りというアーケード街にあり、置いてある本が芸術的なものが多いように思う。流行ものというより「こんな本あったんだ」という他の書店にはない品揃えで、つい長居してしまう。

その中でもこの「色の辞典」は、オシャレなカバーに窓が開けられていて、本体表紙の色鉛筆がのぞく仕様になっていたので思わず手にとった。

数ページめくると、「

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Today/ニュージーランドの子育て支援施設に伝わる詩より#55

Today/ニュージーランドの子育て支援施設に伝わる詩より#55

わたしは自他ともに認める、まじめで几帳面な性格だ。

それは学業や仕事でも役に立ったので非常にありがたい性格だと思っていたし、そのまじめで几帳面な性格がわたしを良い方向へと導いてきてくれたとも思っている。

しかし、育児が始まるとそうではなかった。
そんなまじめで几帳面な性格が、自分で自分を追い込んでいった。

以前にも書いたが、育児は孤独な日々の連続だった。
時間はあるのに暇ではない。
なぜかい

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塩狩峠/三浦綾子#51

塩狩峠/三浦綾子#51

三浦綾子の作品との出会いは、「氷点」だった。

遠藤周作と同じく、大学時代にハマった小説家の一人で、「氷点」「道ありき」「この土の器をも」などを読んだ。

その中でも「塩狩峠」は、1966年4月から約2年半かけて月刊雑誌「信徒の友」に連載された小説だ。

あらすじ
大勢の乗客の命を救うため、雪の塩狩峠で自らの命を犠牲にした若き鉄道員の愛と信仰に貫かれた生涯を描き、人間存在の意味を問う。
結納のため

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「点-ten-」「線-sen-」/宇多田ヒカル#45

「点-ten-」「線-sen-」/宇多田ヒカル#45

わたしが中学生の頃、ラジオから流れてきた時からすきな宇多田ヒカル。

わたしよりちょっと年上で、近所のお姉さんくらいの人がこんな曲を作るのかと衝撃的だった。

何よりわたしは宇多田ヒカルの声と歌詞がすきで、アルバムはすべて購入。

「初恋」が発売されたときには、コンサートの応募券が入っていたのでもちろん買った。妊娠中だったので結局行けなかったが、必ずいつかコンサートに行きたいと思っている。

たぶ

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僕はいかにして指揮者になったのか/佐渡裕#44

僕はいかにして指揮者になったのか/佐渡裕#44

数年前に一度だけ、佐渡裕さんのコンサートに行ったことがある。

まだ子供もおらず、あっちこっちにひとりで出かけていた頃だ。
熊本県立劇場で演奏会があり、一人で行った。

ちなみにわたしはそれほど多くのコンサートへは行ったことはないのだが、坂本龍一、久石譲のコンサートもそれぞれ福岡と長崎で行くことができた。
死ぬまでに一度は行ってみたい!と思ったのが、佐渡裕さんのコンサートだ。

演奏会はもちろん素

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もしも宮中晩餐会に招かれたら-至高のマナー学/渡辺誠#40

もしも宮中晩餐会に招かれたら-至高のマナー学/渡辺誠#40

いつでもOK!へいへい!早く菊の紋章入りの招待状カモーン!

読後、そんな気持ちにさせてくれる一冊がこの「もしも宮中晩餐会に招かれたら」である。

そもそもこの本に出会ったのは、結婚したての23歳の頃。
6つ歳上の夫が持っていた本で「これでいつでも宮中晩餐会に行ける、あなたも用意しておきなさい」とわたしにそっと手渡してくれた。
そんなくだらないやりとりをして読み進めると、わたしの知らない晩餐会の世

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たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く/石村博子#38

たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く/石村博子#38

本当にこんなことが可能なのだろうか?と思うほど、10歳の少年には過酷で、そして希望がある。

たった独りの引き揚げ隊の物語は、1945年の満洲から始まる。
同じく引き揚げの本はいくつか読んでおり、藤原ていの「流れる星は生きている」も感動する内容ではあるが、かなり悲惨な現実が描かれており読後は気分が落ち込む。
それは引き揚げの状況からして当然のことではあるのだが、この「たった独りの引き揚げ隊」は悲壮

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ガラスの仮面/美内すずえ#37

ガラスの仮面/美内すずえ#37

「恐ろしい子…!」(白目)

という月影先生の名台詞が何度も出てくるこの漫画、わたしの人生のバイブルでもある。

出会ったのは中学生の頃。
なのでえーっと、つまりは2000年頃なのだが、連載が始まったのは1976年からなんですよね。もうかれこれ45年続いているわけだ(休載してるけど)。
長い、長すぎる。

自分が20代前後の頃は、
「美内先生お願いです、わたしが死ぬまでにガラスの仮面の最終話を見せ

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ドキュメント生還-山岳遭難からの救出/羽根田治#35

ドキュメント生還-山岳遭難からの救出/羽根田治#35

わたしはかなりの田舎育ちであり、山に囲まれた生活をしてきたが、今更ながら登山をしたいと切実に思っている。

実家の宮崎に住んでいる従姉妹が本格的な登山をしているのが、そう思ったきっかけだ。
コロナ前まではよく登山をしており、登山をした者しか見られない美しい景色や過酷な体験に、「わたしもしてみたい!」という気持ちが高まった。従姉妹はわたしの父とも普賢岳に登山に行ったことがある。ずるい。

運動をする

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女の一生/遠藤周作#31

女の一生/遠藤周作#31

遠藤周作の作品に出会えたのは、わたしの人生の中で幸運なことだったように思う。

「女の一生」は「一部・キクの場合」と「二部・サチ子の場合」の二冊本で、それぞれ600ページ前後ある長編小説だが、18歳のときにあっという間に読み終えてしまった。
物語は長崎を舞台にしており、町名や場所の名前が随所に登場するので長崎人は必見の作品だといえる。

「一部・キクの場合」は、長崎の商家へ奉公に出てきた浦上の農家

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