僕はいかにして指揮者になったのか/佐渡裕#44
数年前に一度だけ、佐渡裕さんのコンサートに行ったことがある。
まだ子供もおらず、あっちこっちにひとりで出かけていた頃だ。
熊本県立劇場で演奏会があり、一人で行った。
ちなみにわたしはそれほど多くのコンサートへは行ったことはないのだが、坂本龍一、久石譲のコンサートもそれぞれ福岡と長崎で行くことができた。
死ぬまでに一度は行ってみたい!と思ったのが、佐渡裕さんのコンサートだ。
演奏会はもちろん素晴らしかったが、佐渡裕さんの柔らかいトーク力も素敵で、じーんと感動したのを覚えている。
しかも187センチと大柄なので、遠い客席から見ても目立つ。
さらにこの存在感もプラスされて、遠目なのに大きく見えた。
「大人になったらベルリン・フィルの指揮者になる」
という夢を、小学校の卒業文集に書いていることからまず驚く。具体的な目標をその年齢で持っていること自体が、常人とは異なる。
そしてそれを現実のものにしているのがからさらに驚きだ。
独学で指揮者を目指し、様々な葛藤がありながらも小澤征爾やバーンスタインといった著名人に出会っていく。
運にも恵まれるが、オーディションにチャレンジしていくその行動力と情熱は、運だけでは手に入れることができないものだと、本を読みながら思う。
クラシックの話ばかりではなく、困難と向き合いながら指揮者になったことを逞しく情熱的に語る本書は、人間力や人との出会いについて考えさせられる。