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#エッセイ集

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趣味や興味のあることと、自分との間に発生する大切なもの。それを言葉にしたエッセイ集。
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#海外生活

らせん状に流れる日々。

らせん状に流れる日々。

生活サイクルを丁寧に回せば人は「成長」する、というのはどうやら本当の話らしい。しかも年齢は問わない。ただ、そのサイクルを回すにあたっては自分の感覚を信頼してやる必要がある。

2年ほど前から趣味で筋トレを継続している。ジムでの筋トレ愛好家との話題はもっぱら「負荷」についてだ。どのような種目を、何セットぐらい、どんな順番でメニューを組むのが筋肉の発達にとって最適かといった話題が大半だ。効果的な負荷の

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あの塩辛いイワシのある場所

あの塩辛いイワシのある場所

20歳そこそこだったぼくはお腹を空かせていて、塩辛い焼きイワシをおかずにパサパサの白ご飯を口いっぱいに詰めて食べていた。みんな笑顔だった。笑顔の人たちと一緒に、塩漬け天日干しを焼いた、飛び上がるほど塩辛いイワシとたくさんの白ご飯でお腹を満たした。

宿舎の地下タンクに溜まった雨水を手動のポンプで一杯ずつバケツに汲み上げて、ボロボロながらその地域ではとても貴重な洗濯機に雨水を放り込んで洗濯をする。洗

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日本酒コミュニティの距離感と多様性。

日本酒コミュニティの距離感と多様性。

「さけのわ」という日本酒レビューのSNSがあり、ぼくも昨年12月頃からやっています。

飲んだ日本酒の味わいを記録して文章(メモ)と写真を投稿する、というのが基本的な使い方なんですが、

純粋に個人的な記録用として詳細数値(日本酒度や酸度等)だけをメモする人、解説文無しで写真だけをひらすら投稿する人、その日本酒の味わいから想起される過去の記憶を辿って散文調にまとめる人、など実に多様な人がいます。

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お酒の嗜好にも「家庭の味」がある。

お酒の嗜好にも「家庭の味」がある。

ぼくはお酒が好きで、ぼくの中では、「豊かな人生を送ること」と「お酒を楽しむこと」の間には大きな相関関係があります。

利き酒師という日本酒関係の資格を持っていますが、何も日本酒だけが好きなわけではなく、ビールもワインもウイスキーも好きだし、焼酎も好き。

仕事でヨーロッパに駐在していた頃は、仕事終わりに近所のスーパーに寄って品揃え多彩なワインやビールを選ぶ行為そのものが楽しかったし、こだわりの酒屋

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曖昧さの中に生きる。海外ビジネスの現場から思うこと。

曖昧さの中に生きる。海外ビジネスの現場から思うこと。

責任の所在。これは誰の責任か。誰の権限で物事を進めるのか。

海外で、特に欧米のお客さんを相手に仕事をしていると、この手の議論に頻繁に出くわします。

1年半ほど前、仕事でタイに張り付いてました。場所はタイですが、お客さんは欧米人。この大型プロジェクトの最終清算が、先日漸く完了したところ。

海外の方の仕事の進め方というのは、「考え方」というレベルを超えて、「思想」そのものが違うなと思わされること

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日本酒を好きな理由。

日本酒を好きな理由。

どうしてこんなに日本酒が好きなんだろう?って、ここ数ヶ月は特に日本酒にハマッていることから時折考えてしまいます。

こういうのって「好きなものは理由なく好き」というシンプルな世界なのでそれで十分かも知れないんですが、ここまで惹かれるのには何か背景があるんだろうという感覚もあって。

今日は、そんな日本酒を愛する理由を思いつくままに書いてみます。

1.原風景との合致ぼくは関西の、「ど」がつく田舎で

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空気は読まない、海外ビジネスの現場から思うこと。

空気は読まない、海外ビジネスの現場から思うこと。

「空気を読む」って、不思議な言葉ですよね。

明確に言葉に出ていないものを先回りして気付く、その場の雰囲気に合わせた行動を取る。忖度(そんたく)する。

社会人になってから、一貫して海外を舞台に仕事をしてます。

日本のお客さんならこうした「空気を読む」対応も求められるのかも知れませんが、海外ビジネスの場で、考え方も価値観も異なる人を相手に空気なんて読んでたら、商売する上で大変なリ

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痛みと苦しみ。誰かにとっての優しさ。

痛みと苦しみ。誰かにとっての優しさ。

「苦労は買ってでもしろ」って言葉、昔は説教くさいなーって思ってました。でも、歳を重ねて経験を重ねるにつれて、その言葉の重みのようなものを感じます。

今でこそジムは閉まってますが、1年半ほど前から筋トレをしていて普段は週4回はジムに通ってます。苦労は買ってでもしろ、っていう世界の良さを筋トレは見事に体現してくれていて、

・痛みや辛さは、ある意味でその先の成長を保証してくれていること
・自分をアッ

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転職して、「他人の評価」というモノサシは「納得感」に変わった。

転職して、「他人の評価」というモノサシは「納得感」に変わった。

「仕事ができない」と言われる人の中にも本当に思いやりのある方は沢山いるし、逆に「仕事のできる」人の中にも人間的には参考にしたいと思えない方も沢山いる。

仕事で結果が出ないからといって、ぼくらの人生や人間性が損なわれるべきではないし、ぼくらの人生には仕事のほかにも大切なものが沢山ある。

このような見方ができるようになったのは数年前に大企業から小さな会社へ転職してから。

大企業に入る人というのは

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ぼくは、怖くて仕方ない方の道を選びました。

ぼくは、怖くて仕方ない方の道を選びました。

・「平均点の高い」「均質な」人材育成を狙った高等教育を受ける。
・出来るだけ大きな会社に入って将来を安泰に過ごす。

もう20年以上前の話だ。

こんなギチギチの狭い価値観の上に築かれたレールの上を行くこと、それが日本社会での成功体験とされていた。改めて言葉に起こしてみて、時代は大きく変わったと実感する。

かく言うぼくも、そのレールの上をひた走っていた。人よりも「早く」「効率的に」「上手

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違いを前提として。英語から見た日本社会。

違いを前提として。英語から見た日本社会。

「あの先週言ってたあれ、進捗どうなってる?」

日本で仕事をしていて、上司からこんなフォローを受けることないですか?

日本語、日本の文化というのはとても不思議なもので、こんな曖昧さたっぷりな内容でコミュニケーションが成立する、

ということになっている。

少なくともこういう言葉を発している人は、詳しく説明しなくても分かるでしょ?って思ってるはず。

そして仕事であれば、部下の立場からす

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