空気は読まない、海外ビジネスの現場から思うこと。
「空気を読む」って、不思議な言葉ですよね。
明確に言葉に出ていないものを先回りして気付く、その場の雰囲気に合わせた行動を取る。忖度(そんたく)する。
社会人になってから、一貫して海外を舞台に仕事をしてます。
日本のお客さんならこうした「空気を読む」対応も求められるのかも知れませんが、海外ビジネスの場で、考え方も価値観も異なる人を相手に空気なんて読んでたら、商売する上で大変なリスクを抱えかねません。
海外ビジネスの商談というのは、誤解を恐れず言えば「闘いの場」であって、お互いニコニコと話しながらも、利害が衝突し合う場です。
もちろん海外のお客さん相手であっても、「信頼に裏付けされた、会話のできる関係」が理想であって、それが契約条件に優先することに異論はありません。
ただ、商売である以上、何が起こるか分からない訳で、特に海外の商売・プロジェクトで全てが計画通り、なんてことはあり得ないので、結局は書き物(合意内容)の出来栄えが商売のベースになってきます。
物事を明確にする。
海外を舞台に長らく仕事をしていていつも思うのは、
・物事をうやむやにしない
・分からないことは、はっきりと質問する
・「バカげた」質問なんて存在しない
ということ。
「みんな互いに違う人」というのが前提なので、分からないことは聞くという態度は当たり前。
他人から見た「バカげた質問」なんてないわけです。分からないことは聞けばいい。お金とリスクと信用をかけて仕事してるんだから、なおさらです。
物事をうやむやにしたまま、分からないことを中途半端に汲み取った気になって仕事を進めていたら、気付いたら大変な勘違いがあって大きなリスクを抱えていた、
なんて、普通に起こり得ます。
質問して自分の理解と違うなら、さらにその背景を聞いて理解すればいい。
それでもお客さんとは方向性が違うことが分かれば、その場で議論をして何を考えているのか明確に伝えればいい。
そういうシンプルな世界かなーと思ってます。
議論を交わしたらわだかまりが残っちゃった!みたいな、日本でありがちなややこしさは基本無いです。
むしろ、こういった「質問」「説明」「主張」というのは日常の風景であって、何も遠慮するところはなくて。
逆に、発言せず何を考えてる人か分からないといった状態や、やたらと迎合ばかりするといった態度は信用を失いかねません。
何を考えてる人か、どんな主張を持ってる人か、これを伝えることが仕事の始まりです。
お客さんが何を考えている人か、これを知るのが仕事の始まりです。
なので、「空気を読む」という言葉に象徴される場面にぶつかった、というのは海外ビジネスの現場で記憶にありません。
(もちろんマナーや礼儀やエチケットは存在するので、リスペクトを欠く態度はダメです。)
「空気を読む」ではなくて。
海外ビジネスの風景がそのようであるのは、上に書いた通り「みんな互いに違う人」という共通認識があるから。
逆をいえば、日本社会にはびこる「空気を読む」という神技は、社会の同質性と同調性がその前提になってるから。
相手の言動パターンを予め掴めない状態で、空気なんて読めないから。
何を考えてるのか分からない人の心を先読みなんて出来ないから。
「みんな同じ」という幻想が、まだまだ日本には根強く存在するって、そういうことだと思います。
でも、日本人もみんな同じように見えて、ほんとは一人一人違うはずなんですよね。
**求められるのは寛容さ **
これだけ変化の激しい時代に、先行きの不透明な時代に、まずは「みんな同じ」の幻想を捨てることから始めないと。
だって、こんな時代に必要なのは、自分と違った背景・事情を抱えた人への想像力であって、そのベースは他人への寛容さだと思ってます。
一人一人、みんなそれぞれの事情と背景を抱えて生きている。
その事実にきちんと向き合う。まずはそこから始めてみたいなーって思ってます。