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2024年8月の記事一覧
【159字】肉の香り
『肉の香り』 路地裏で、肉の焼ける匂いに誘われ扉を開く。店内は暗く、肉の塊が吊るされている。奥から現れた白衣の男。
「いらっしゃい。特別な肉はいかが?」
その瞳に映る私は、笑みを浮かべていた。
夢から覚める。隣で寝息を立てる白衣の恋人。そして、台所から漂う甘い香り。
起き上がり、冷蔵庫を開ける。その中には、人型の肉……
【174字】にわか雨の告白
にわか雨の告白 私は雨に打たれていた。突然の雨。濡れた路地裏で、見知らぬ男が私に告げた。
「君は今、殺された」
驚く私。だが、男の言葉は続く。
「いや、正確には五分後に」
混乱する私。男は懐中時計を取り出し、
「さあ、謎を解け」
私は必死で考えた。そして閃いた瞬間、男は微笑み、霧のように消えた。
雨は止み、私は生きていた。殺されたのは、無知な私だった。
【164字】竜巻の眼
竜巻の眼 都心の喧騒から離れた公園。私は木陰で読書に耽っていた。
突如、空が暗転。目を凝らすと、巨大な渦が迫っていた。竜巻だ。逃げなければ。だが、足が動かない。渦の中心で、奇妙な光景が広がる。
そこには、もう一人の私がいた。笑みを浮かべ、本を手にしている。目が合う。瞬間、全てが静寂に包まれた。
私は、まだここにいるのだろうか。