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湧澄嶺衣
2024年11月4日 05:56
『肖像の迷宮』私は、写真館でポートレートを撮ろうとしていた。シャッターが下りる瞬間、眩い光が走る。現像された写真には、知らない私が写っていた。着ている服も、表情も、年齢さえも違う。不思議に思い、もう一枚撮る。今度は、また違う私が写っていた。写真を重ねると、そこに物語が見える。これは、私の別の人生なのか。「目覚めの時です」カメラマンが告げる。写る姿は、年老いた私自身だった
2024年10月25日 05:38
『金属の記憶』都心の路地で、私は立ち止まった。鋭い金属臭が鼻をつく。懐かしい匂い。その日から、街中で金属臭を感じるようになる。人々の吐く息、建物の隙間から漏れる風。ある日、自分の手から同じ匂いが。鏡を覗くと、皮膚が金属のように輝いていた。パン屋に駆け込む。店主も私を見て頷く。「目覚めの時ですね」その店主の体も、金属光を帯びていた。案内された地下で、真実を知る。私たちは機
2024年10月23日 05:49
『電柱の記号』路地裏……私は一本の電柱の前で足を止めた。そこに刻まれた不思議な記号が気になった。写真に収めようとすると、ファインダーの中で記号が動く。気づけば、街中の電柱に同じような記号が浮かび上がっていた。記号を繋ぐと、巨大な魔方陣のような模様が浮かぶ。その瞬間、街の風景が歪み始める。建物が溶け、人々が消え、電柱だけが残る。そこへ、もう一人の私が現れる。「これが本当の姿」
2024年10月22日 05:33
『夢幻の住人』都心の古書店で、私は一冊の本を手に取った。開くと、そこには見知らぬ街の地図が描かれている。地図を眺めているうちに、周囲の景色が溶け出す。気づけば、私はその地図の街にいた。街を歩けば、どこか懐かしい。でも初めて来たはず……。住人たちは皆、私を知っているかのように挨拶をする。「お帰りなさい」老婦人が言う。「長い旅でしたね」私の中で、記憶が蘇っていく。この街の住人
2024年10月20日 05:40
『蒼光の記憶』都心の雑踏で、私は足を止めた。目の前で、蒼い光が一瞬煌めいたような。その日から街に、深く青い色の蒼い光が見え始めた。建物の隙間、人々の影に、微かに蠢く蒼い輝き。ある夜、鏡を覗くと、瞳に蒼い光が宿っていた。その瞬間、記憶の氾濫が始まった。見知らぬ風景、聞いたことのない言葉。それは私のもの、でも私のものではない。蒼い光に導かれ、知らぬ間に歩いていた。気づけば、無
2024年10月19日 18:08
『闇の峠』 険しい山道を進む。写真を撮るため、私は好奇心に駆られてここまで来た。 峠に差し掛かると、突如として霧が立ち込め、視界が遮られる。不安に駆られながらも、カメラを構える。 シャッターを切った瞬間、霧の向こうから人影が。慌てて逃げ出すが、足を滑らせ転倒。目が覚めると、見知らぬ部屋のベッドに横たわっていた。 枕元には一冊の本。開くと、そこには私が撮ったはずの写真が。しかし、霧の中の人
2024年10月18日 05:35
『魂の収穫祭』雑踏で、私は足を止めた。行き交う人々の影が、突然消えたような気がして。その日から、人々の影が気になり始めた。歩く度に揺れる影が、少しずつ薄れていく。ある日、自分の影を見ると、それも薄くなっていた。そこへ、影のない老人が近づいてきた。「収穫の時期です」老人は私に告げる。「あなたの魂も、もうすぐ熟します」気づけば、私は見知らぬ祭りの中にいた。人々は踊り、歌う。だ
2024年10月16日 09:16
『異星の瞳』雑踏で私は足を止めた。通りすがりの人の瞳が、一瞬だけ輝いた気がして。その日から、人々の目が気になり始めた。瞬きの合間に、異質な光を放つ瞳。ある日、鏡を覗くと、私の瞳も変わっていた。虹彩が渦を巻き、宇宙が広がっているかのよう。パン屋に入ると、店主が私を見て微笑む。「待っていました」その瞳も、宇宙を映していた。裏路地に案内され、そこで真実を知る。私たちは地球外生
2024年10月15日 11:02
『夢幻潜入』古書店で、私は一冊の本を手に取った。開くと、そこには「潜入捜査の手引き」と記されている。ページをめくる度に、周囲の景色が変わっていく。気づけば、私は見知らぬ組織の一員となっていた。記憶が書き換わる。私は潜入捜査官。だが、何を捜査しているのか思い出せない。組織の中で、私は昇進を重ねていく。そして、ついに最高幹部となった時。鏡に映る顔が、本来の自分ではないことに気づ
2024年10月14日 11:15
『前人類の遺伝子』私は足を止めた……。雑踏を歩く私の目の前で、通行人が突然姿を変えた。人々の姿が歪み、獣のような姿になっていく。だが、誰も気づいていない。私だけが見えるのか。恐る恐る歩を進めると、景色が一変する。そこは原始の森。巨大な獣たちが闊歩している。「目覚めたのね」声がする。振り返ると、獣の姿の私。「あなたの中の前人類の遺伝子が」と告げる。現代と原始が重なり合う風景。
2024年10月13日 10:49
『湖底の記憶』都心の地下鉄駅。私は階段を降りていく。降りても降りても、終わらない。気づけば、そこは巨大な地底湖の岸辺。水面に映る景色は、懐かしい街並み。湖面に足を踏み入れると、水中に引き込まれる。だが、息はできる。歩くこともできる。水中都市。建物は朽ち果て、人々は泡となって漂う。その一つ一つが、記憶の欠片のよう。泡に触れるたび、見知らぬ記憶が蘇る。私の物語。私ではない誰か
2024年10月12日 10:30
『魔法陣の迷宮』路地裏の古書店。私は一冊の本を手に取った。開くと、そこには複雑な魔法陣が描かれている。指でなぞった瞬間、世界が歪んだ。気づけば、巨大な魔法陣の中心に立っていた。周囲を見回すと、無数の扉が浮かんでいる。それぞれに、見覚えのある風景が映っている。「選びなさい」声が響く。「あなたの運命を」恐る恐る、一つの扉に手をかける。開くと、そこは別の私の人生。扉をくぐる
2024年10月11日 05:36
『小石の記憶』都心の雑踏。私は足元の小石を拾った。掌の中で転がすと、不思議な感覚が走る。目を閉じると、見知らぬ光景が浮かぶ。開くと、そこは別の場所。別の時代。私の姿も、着ていた服も変わっている。そこへ、知らない人が近づいてきた。「お待ちしておりました」と、私に語りかける。状況が飲み込めないまま、私はついていく。街並みが変わるたび、私の姿も変化する。そのたび、小石が熱を帯び
2024年10月10日 05:27
『逆映する世界』都心の雑踏。私は足を止めた。水たまりに映る空が、暗闇に変わっていく。周りを見回す。誰も気づいていない。私だけが見えるのか。恐る恐る水面に触れる。すると、体が吸い込まれるように沈んでいく。目を開けると、そこは逆さまの世界。建物は天井から生え、人々は逆立ちして歩く。私だけが『正しい』向きで立っている。だが、周囲の人々は私を奇異の目で見る。「あなたもようこそ