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【336字】朝焼けの幻影

朝焼けの幻影


 あさやけに染まる空を見上げ、私は足を止めた。都心の喧噪から逃れ、ひっそりとした路地に迷い込んでいた。

 その時、不思議な光景が目に飛び込んできた。路地の奥に、朽ちかけた洋館が佇んでいたのだ。あさやけに照らされ、幻のように揺らめいている。
 好奇心に駆られ、私は洋館に近づいた。扉は軋みを上げて開き、私を中へと誘う。
 薄暗い廊下を進むと、一枚の写真が目に留まった。そこには、私自身が写っていた。しかし、背景は見知らぬ部屋。そして、私の手には見覚えのない鍵が。
 混乱する私の耳に、かすかな足音が。振り返ると、そこには……。

 目を開けると、私は自室のベッドの上にいた。夢だったのか。安堵のため息をつく。
 しかし、枕元には一枚の写真が。そこには、夢で見た洋館が写っていた。

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