【370字】鯉の涙
鯉の涙
ある日、都心の古書店で見つけた一冊の本。表紙には鯉の絵。開くと、涙のような水滴が滲む。不思議に思いながら購入し、帰宅後、再び開くと——驚いたことに、本の中身が白紙になっていた。
翌日、同じ本屋を訪ねるが、店主は「そんな本は扱っていない」と首を傾げる。混乱する私。そのとき、店の奥から聞こえてきた水の音。
好奇心に駆られ、音の方へ向かう。すると、壁に隠された扉を発見。開けると、そこには巨大な水槽。中には一匹の鯉が泳いでいた。
鯉と目が合う。突然、頭に響く声。
「君は私の涙を拾った。だから、君にだけ真実を語ろう」
鯉は語り始めた。この世界の秘密を。そして、私たちが知らされていない現実を。
話を聞き終えた瞬間、私の周りの景色が歪み始めた。目を開けると、そこは見知らぬ街。
手には一冊の本。開くと、そこには鯉の語った真実が記されていた。