【415字】不詳の書籍
不詳の書籍
私は、いつもの通り本屋に立ち寄った。
新刊コーナーを眺めていると、一冊の本が目に留まった。しかし、表紙には絵も文字もタイトルすらない。奇妙に思いながらもレジへ向かう。
「この本、作者不明なんですね」
店員は困惑した表情を浮かべた。
「申し訳ありません。在庫にない本です」
私は混乱した。確かにここにあるのに、どういうことだろう。
家に戻り、その本を開いた。ページをめくると、そこには意味不明な文字の羅列。でも、よく見ると何かのパターンがある。
私はいつの間にか夢中で解読を始めていた。
数時間後……その文字列が解読出来た。そこに書かれていたのは、驚くべき事実だった。
この世界は、誰かの書いた物語の中にあるという。そして、その物語を書いていたのは……私自身だった……。
私は慌てて窓の外を見た。空には、巨大な万年筆が浮かんでいる。そして、私の耳元で声が響いた。
「物語を書き続けてください」
私は深呼吸をして、ペンを取った。