【394字】熊の足跡
熊の足跡
都心の雑踏を抜け、山道を登る。趣味の写真撮影のため、一人で山に来たのだ。
木々の間から差し込む陽光に目を細め、カメラを構える。その時、異様な足跡が目に入った。熊の足跡だ。興奮と恐怖が入り混じる。
足跡を追う。心臓の鼓動が激しくなる。やがて、洞窟の入り口に辿り着いた。
暗闇の中、何かが光る。近づくと、それは巨大な熊の彫像だった。彫像の目は宝石のように輝いていた。
不意に、後ろから声がする。
「よく来たね」
振り返ると、そこには老人が立っていた。
「君は選ばれたんだよ」
老人の言葉に戸惑う私。彼は続けた。
「この彫像は、好奇心旺盛な者だけが見つけられる。君はその資質を持っている」
突然、彫像が動き出した。目の前で熊が立ち上がり、私に手を差し伸べる。
恐怖で動けない私に、老人が囁いた。
「選択は君次第だ。新たな世界へ踏み出すか、それとも……」
熊の手に触れるか否か。決断の時が来た。