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アニメ語り

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駆け抜けるように全話制覇したい。
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#映画レビュー

『映画 ゆるキャン△』やはりそれは、極めて優しいファンタジー。

『映画 ゆるキャン△』やはりそれは、極めて優しいファンタジー。

 TVアニメ『ゆるキャン△』には、命を救ってもらった恩義を感じている。

 全世界を混乱に陥れた疫病が広まった最初の年、その感染対策と社内の新規事業に携わったタイミングが嫌な形で合致し、どんなに努力しても売り上げは上がらず、正解のない業務に絡めとられ残業時間は過労死ラインを余裕で突破していた。

 そんな折にふと1話を再生して、じんわりと暖かいスープを飲んだ時のような安らぎにふと涙してしまった。1

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初めて『アイカツ!』の時が動き出す瞬間に立ち会った。

初めて『アイカツ!』の時が動き出す瞬間に立ち会った。

 『アイカツスターズ!』の1話を再生したのが昨年の7月ということで、彼女たちのアツいアイドル活動を見守り始めてもうすぐ一年が経とうとしている。そして今日は、そのシリーズの最新作と偉大なる初代の続編が劇場公開され、新たに時計の針が進む瞬間を目にしてきた。女児向けアニメへのアンテナが低い私にとって、『アイカツ!』の最新話を諸先輩方と同じ目線で、同じタイミングで「立ち会う」ことは初めてで、朝一の上映にも

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『アイの歌声を聴かせて』愛を歌うAIは命の輝きを機械の身体に宿す。

『アイの歌声を聴かせて』愛を歌うAIは命の輝きを機械の身体に宿す。

 『攻殻機動隊』が大好きだ。と言っても、繰り返し観るのは押井守が手掛ける劇場二作や、神山健治氏のTVシリーズ『STAND ALONE COMPLEX』なのだけれど。

 これらの作品では、人間は生身の身体を捨て義体化する者が現れたり、生身を維持しながらも自らの脳を電子化された脳、すなわち電脳へと換装し、自身の身体一つで広大なネットワークに接続する時代が到来している。また、作内に登場する多脚戦車はA

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商店街育ちには眩しすぎたよ。『サイダーのように言葉が湧き上がる』

商店街育ちには眩しすぎたよ。『サイダーのように言葉が湧き上がる』

 暑くなってきたので、髪をバッサリ切ってもらった。髪質が特殊なので髪形は幼少期から変わらないが、髪を切った後は頭が軽くなって、気持ちも前向きになる。このまま家に帰るのが勿体なくて、映画館に行くことにした。予告編もあらすじも知らない、Twitterで誰かが絶賛してたな、くらいの認知度しかなかったけれど、シネコンのポイントが溜まってて無料で観られるし、何かの縁だと思って『サイダーのように言葉が湧き上が

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TVアニメ10話までしか観ていないのに無限列車に乗せられた話

TVアニメ10話までしか観ていないのに無限列車に乗せられた話

 「私がお金払うから一緒に観て」という古き良きキンプリヤクザの手法でとある映画を観ました。日本で最も売れた映画こと『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』です。

 オタクと呼ばれる人種の中には、常日頃から自分の沼に誰かを引き入れる努力を惜しまない人がいます。そしてぼくのTLには「ぼくにプリキュアを観せたいオタク」と「ぼくにアイカツを観せたいオタク」、最上級として「ぼくにプリキュアとアイカツの両方を観せた

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ナメてた中国産アニメ『羅小黒戦記』が刺さりまくったのでプレゼンさせてほしい。

ナメてた中国産アニメ『羅小黒戦記』が刺さりまくったのでプレゼンさせてほしい。

 「ジャパニメーション」という言葉があるくらいだから、ディズニーとかドリームワークスとか、そういった大手を除けば、少なくとも手書きのアニメなら日本に匹敵するものはないだろうと思い込んでいた。だから、『羅小黒戦記』を観るまでの私は世間知らずで、井の中の蛙だった。本当に良いものを観させてもらい、笑った、泣いた。当初は全国3館のみの上映でありながら評判が評判を呼び、やがて日本語吹き替え版が製作・公開され

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「ヴァイオレット・エヴァーガーデンを観ろ」とDMをくれたあなたへ、感謝の手紙を送りたい。

「ヴァイオレット・エヴァーガーデンを観ろ」とDMをくれたあなたへ、感謝の手紙を送りたい。

拝啓

日増しに寒さもつもり、かじかむ指に風情を感じるこの季節、いかがお過ごしでしょうか。私といえば、先日ご紹介いただきました『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を鑑賞し、情緒はグチャグチャになり、目は腫れ夜も眠れず、この頃ずっと「愛」について考える日々を送っております。

どうしてくれるんですか。あなたのせいです。

 それは9月の中頃、夏の終わりを認めないかのように強情に着込んでいた半そでのシ

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『劇場版 Fate/stay night Heaven's Feel III. spring song』待ちわびた春、その笑顔に救われた。

『劇場版 Fate/stay night Heaven's Feel III. spring song』待ちわびた春、その笑顔に救われた。

 映画の鑑賞を終えて劇場を出た瞬間、猛烈な日差しと暑さ、セミの声が一斉に襲い掛かってきた。今なお全世界で猛威を振るう疫病によって、本作が奪われた情緒はあまりに大きかったのだと、痛感した。絶望と喪失を繰り返し身も心もボロボロに引き裂かれて、それでも最後に残った微かな希望を示すラストシーン、それと同じ風景を見られたらどんなによかっただろう。

 『劇場版 Fate/stay night Heaven'

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頼むから #パトレイバー4DX を観に行ってくれ。時間がないんだ。

頼むから #パトレイバー4DX を観に行ってくれ。時間がないんだ。

 タイトルで全て出し切った気がするが、何度でも念押ししよう。頼むから、『機動警察パトレイバー the Movie 4DX』を観に行ってくれ。DVDや配信じゃ意味がないんだ。今この瞬間、この作品を劇場で観ること、それも4DXに搭乗することに意味があるんだ。きっと忘れられない経験になることを保証する。さぁ今すぐ座席を予約して、街に出よう。

 アニメファンをやっていればもちろんパトレイバーは義務教育…

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ミリしらでプリキュアの集大成を浴び、鼻水垂らして泣くオタク

ミリしらでプリキュアの集大成を浴び、鼻水垂らして泣くオタク

 まずは、経緯から話しますね。

 誰も悪くないこれは悲劇やさんのこちらの記事がとても面白かったんですよ。この記事の内容とはズバリ、

仮面ライダー本編を一切観たことがないまま『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』を観るとどういう感想を抱くのかという人体実験

 というもの。平成ライダー映画の最終作を飾る超ド級の怪作ジオウOQを、ライダー慣れしていない視点での感想を通して客観視

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作家性が強すぎて溺れそうになる、新海誠印120%の『天気の子』

作家性が強すぎて溺れそうになる、新海誠印120%の『天気の子』

 とある宣伝コピーに「全世界待望」という一文があり、思わず目まいがした。『君の名は。』の歴史的大ヒットを受け、いつしか新海誠はそういう立ち位置のクリエイターに登りつめた。かつては知る人ぞ知る究極の自主製作家だったのに、今では宮崎駿の後継者とまで称されている。彼をメジャー界に引っ張ってきた川村元気プロデューサーの慧眼たるや恐るべしだが、まず何よりも新海誠作品が日本映画歴代2位の興行収入を記録すること

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前に進むための寄り道『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』

前に進むための寄り道『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』

日ノ本に突如現れた不死の怪物「カバネ」との闘いを生き延びた甲鉄城の面々は、人間とカバネの新たな攻防の地である日本海沿いの廃坑駅「海門(うなと)」へやってくる。生駒たちは現地の人々と連合軍を結成しカバネ撃退の策を立てるが、海門の地にはある悲しい過去が隠されていた。

 2016年放送のTVアニメ『甲鉄城のカバネリ』待望の新作がついに劇場とネット配信で公開された。作画の美しさもさることながら、縦横無尽

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『バースデー・ワンダーランド』も観てください。

『バースデー・ワンダーランド』も観てください。

6人だった。 何が、と言われれば、『バースデー・ワンダーランド』を鑑賞した際の観客数だ。私を入れて6人。朝一の回とはいえ、ゴールデンウィークの真っ只中の5月1日改元の日、ファーストデーで割引料金が適用されるというのに、サッカーチームにも満たない人数しか駆けつけていない。これはマズい。『アベンジャーズ』『名探偵コナン』『キングダム』に挟まれた不運な時期とはいえ、原恵一監督の企画が今後通りづらい世の中

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まさか『えいがのおそ松さん』に泣かされるなんて。

まさか『えいがのおそ松さん』に泣かされるなんて。

相変わらず童貞ダメニートな松野家の六つ子たちは、高校の同窓会に出席し、立派な社会人として成長した同級生たちの姿に打ちのめされる。高校時代にいい思い出なんてなかった―。深酒をして眠ったおそ松たちが目を覚ますと、彼らは「思い出の世界」に閉じ込められていた。この世界から抜け出すためには、六つ子の中の誰かが思い残した後悔を解消しなければならない。真実を知るため、おそ松たちは18歳の自分たちに会いに行くのだ

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