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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2024年11月の記事一覧

『現象学と科学批判』(丸山徳次・晃洋書房)

『現象学と科学批判』(丸山徳次・晃洋書房)

発行は2016年であるが、新しい論文は一つだけ、と言ってよい。最後に、東日本大震災における福島の原発事故を話題にしたものは、明らかにそうだと分かる。他は、1980年代と90年代のものである。
 
その辺りの経緯については、「あとがき」に記されている。編著や共訳が多い著者であるが、自分の名だけの本は、どうやらほかにはないようだ。自分名義で、しかも分厚い装丁の本を呈するということで、当然緊張が走ったこ

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『詩篇の花束』(広路和夫写真・草苅美穂花・いのちのことば社)

『詩篇の花束』(広路和夫写真・草苅美穂花・いのちのことば社)

義母に差し上げようと思った。店頭で見たとき、これはステキだ、と感じたのだ。
 
2003年に発行され、入手したものは2014年の第8刷である。長きにわたって、よく売れているということなのだろう。ただ、私が好んで買うタイプの本ではなかったので、私の視界には入っていなかった。いま、こうして誰かのために役立つことを考えるようになって、目に映った景色だ、ということだろうか。だから、写真がこよなく美しく輝い

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『深い河』(遠藤周作・講談社)

『深い河』(遠藤周作・講談社)

昨今、こうした文学者の本が入手しづらくなっている。先日は大江健三郎の本を、と思ったが、一向に見当たらないのだ。ノーベル賞を受けても、書店は置かないのである。遠藤周作もかつては多くの人気作家コーナーに並ぶような売れっ子だったのに、いまはさっぱりである。
 
NHKの100分de名著の「宗教とは何か」に、この本が紹介されていた。4人の論者のうちの1人が扱っていたのだ。粗筋のようなものも当然そこには書い

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『プルーストとイカ』(メアリアン・ウルフ:小松淳子訳・インターシフト)

『プルーストとイカ』(メアリアン・ウルフ:小松淳子訳・インターシフト)

今井むつみ教授の推薦の本である。早速読みたくなった。
 
タイトルが普通ではない。一般向けの書であるために、ユニークなものとしたのだろうとは思うが、分野としては脳科学に属する。テーマは、読書である。さらに言えば、文字が人間の脳に与えた影響を探るというものである。
 
人間の能力については、しばしばそれの欠陥や障害の実例を探ることによって、健常者の能力や性質が明らかになる場合がある。本書においても、

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映画「きみの色」

映画「きみの色」

8月末に封切りで、この近くでは遂に10月末で上映終了となった、映画「きみの色」。その最終上映で、機会を得てやっと観ることができた。
 
ずっと観たかった。山田尚子監督の作品は好きだし、評判も良かった。こういうとき、私は細かな下調べはしないことにしている。殆ど白紙の状態で、映画館に臨むのがいいと思っている。今回も、評判の良さ程度が、予備知識のすべてだった。
 
結果、言葉にできない感動を与えられた。

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『加藤常昭説教全集2 ローマ人への手紙1』(加藤常昭・ヨルダン社)

『加藤常昭説教全集2 ローマ人への手紙1』(加藤常昭・ヨルダン社)

タイトルか出版社を見て、「おや」とお思いになった方がいたかもしれない。「ローマ人への手紙1」は、教文館発行の全集では第17巻である。2005年に発行されたこちらは、改めてヨルダン社版の作品と、さらに多くを重ねて完成したものであり、ヨルダン社は2003年に破産宣告を受け、翌年手続きを完了している。良い本を多く出版していた。惜しいことをした。
 
私が入手したのは、そのヨルダン社版である。手頃な価格で

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